最終日に行って参りました。
大きい「絵唐津葦文大皿」が最初にどーんと有って、インパクトが有ったんですが、茶色系の皿はこれ位でしたね。同色の「絵唐津葦文皿」は接地部分の高台形の円が非常に小さいお皿で、不安定な感じで、ヤジロベエを見ているような気分になりました。
「白磁如意頭文輪花杯」は純白の小さな杯で、毎度ながらそういうのは好みです(笑)やっぱり心に残りますよね。「色絵梅竹文徳利」なんていうのも大きな、白が基調の徳利で、朱が映えていました。
鍋島には景徳鎮に対する憧れが強く有ったそうですが、その景徳鎮の作品も多く、「五彩草虫文杯」は草の描写が細密で、小さく、気品が際立っていました。
景徳鎮のものでは「藍釉五彩描金花鳥文瓢形瓶」が鮮やかな青色が素晴らしく、凛冽とした存在感が有りました。同じく青一色のものでは日本の江戸時代前期の「瑠璃釉金銀朱彩花鳥文瓢形徳利」と「瑠璃釉金銀彩梅花文瓢形徳利」が有りましたが、景徳鎮のものとは違った神さびた味わいが有って、隣国でありながら、中国と日本は対照的な文化的使命を帯びているんだなぁ、と思いました(一筋縄では有りませんが)。
最後の「古伊万里の華麗」の部には巨大な皿が沢山有って、「色絵美人図屏風文大皿」が海外向けの彩色鮮やかなもので、素晴らしかったです。作ろうと思えばこういう派手なお皿も作れる訳で、肥前磁器というのは優れた職人の作家的なものであると同時に、需要と供給の大きな枠組みの中で花開いた文化だったのだ、ということが視界の向こうに見えるような気がしました。日本向けと思われるものでは、「色絵紫陽花文共蓋壺」が落ち着いた味わいが有って良かったです。
「色絵冊子文皿」は皿の中に本を散らした構図で、洒脱で独特の浮遊感があって、面白かったです。
図柄が含まれているということで屏風なんかも有って、菱川帥平の「春秋遊楽図屏風」が中々素晴らしく、群集図なのですが、どの人も姿形がとても生き生きとしていて、これは江戸の絵の醍醐味の一つだと思います。作者不詳の「遊女歌舞伎図」は、歌舞伎に女性が出ることが禁じられる以前の華やかな絵で、この方向のまま発達した日本文化も見てみたかったなぁ、と思わせました。
他には焼き物の像が有って、「色絵坐姿美人像」が脇息にもたれた、リラックスした雰囲気が良かったです。中国のものには徳化窯の「白磁観音像」が有って、中国らしい腰高の捻った姿が美しく、純白で素晴らしかったです。
焼き物を見ていて思ったんですけど、絵と同じように見ると余り良くないかもしれませんね。絵柄はほどほどに見て、触った気分にでもなって、質感を楽しむのが面白かったです。「染付牡丹文大皿」のくぐもった白や「青磁花唐草文水指」のエメラルド色、「色絵周茂叔愛蓮文大皿」の濁手と呼ばれる乳白色など、えもいえぬ質感が素晴らしかったです。中々他の芸術では味わえないことだと思います。この前見てきたガレが、何を感じて碗「蜻蛉」を作ったのか、という事が感じられた様にも思いました。
作品の解説の至る所に「瀟洒」という言葉が使われていましたが、どの品もまさに瀟洒でした。一つ一つの作品が素晴らしいというのも有りましたが、それらが醸し出す雰囲気が会場を包んでいて、佇んでいて楽しい展覧会でした。ありがとうございました。
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