プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第一番、第二番 ショスタコーヴィチ:4つの前奏曲 10の前奏曲 庄司紗矢香(ヴァイオリン)ゴラン(ピアノ)

#その他音楽

それにしても2月のストラヴィンスキーの協奏曲の公演のチケットが売り切れなんですって?庄司さんは先が長いし楽しみなのでチケット取得の優先順位がどうしても下がってしまうのですが、これは結構聴きたいなぁ。
ヴァイオリンソナタはピアノとヴァイオリンの二重奏ですけど、相変わらず原題からピアノを抜いたヴァイオリンソナタという言い方は謎で、一体誰がどういう意図をもって訳したんでしょうね。このCDもピアノのゴランが立派で、木訥として色彩も有る良い音楽を奏でていました。
第一楽章はくまんばち飛行の様にプルプル震える音形から庄司さんの圧倒的な集中力が伝わってきます。庄司さんの音の色彩は普通の人のヴァイオリンとは異なります。無限の強弱長短からその音だけを選りすぐって弾いている、という印象を極めて強く感じるんですよね。主観的な話ですが。
中間の弱音を繰り返す所は「墓にそよぐ風」を表しているそうですが、庄司さんのヴァイオリンと共に音楽を表すのに実にぴったりな表現なので驚きました。順番が逆ですけど(笑)
二楽章は気合と覇気が最高で、味わえます。第三楽章は小さな音量で一貫しますが、求心的なヴァイオリンの存在感は極めて強く、ピアノもけれん味の無い音色でマッチしています。
第四楽章は庄司さんの土俗的な力強さが全開しています。高貴な疾走感が最高です。
二番の第一楽章の第一主題は優しくて良いですね。何度も帰ってきて、その度に嬉しいです。この主題が終わるといきなり音楽が速く転じますけど、庄司さんは実に上手いです。きっぱりしていて痺れます。
第二楽章は動的だけど闊逹とは言えない音楽が、ロシアっぽいです。
第三楽章も冒頭のなんとなく不安を孕みつつも夢的な甘さの有る旋律が良いです。
第四楽章は僅かにピーターと狼の主題を思い出させる冒頭にプロコフィエフの個性が現れています。純音楽作品で有るためかあそこまで明るくなりませんが、高音部の多い元気な音楽を庄司さんは見事に弾ききっています。3:30位からの緩の部分のニュアンスも実に素晴らしいです。
ショスタコーヴィチの「4つの前奏曲」と「10の前奏曲」はツィガーノフという人が「ピアノのための24の前奏曲」をヴァイオリンソナタ用に編曲したものだそうで、表情がころころ転じます。楽しく踊る様であったり、いきなり威風堂々としたり、沈んでみたりとする音楽を庄司さんは丁寧に濃い味わいで演奏しています。シニカルな曲は所々テルミンのようです。いや、それよりずっと心地よい音色ですけど(笑)
庄司さんの演奏を聴くと心になんともいえない充足感が生まれます。リヒターのクリスマスオラトリオの時も感じましたけど、人は真に音楽的な演奏を聴くと癒されるように出来ているのかもしれません。見事な演奏でした。

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