城王たちの物語 エル・エスコリアルの孤独~フェリペ2世と4人の王妃

さらに遠いですが、「城王たちの物語 エル・エスコリアルの孤独~フェリペ2世と4人の王妃」を鑑賞。

二人目の奥さんがメアリー・テューダー。年上の奥さんのである上に、イングランド国内のスペインを警戒する動きからフェリペ2世の権利が極めて制限されており、スペイン目線の今回では踏んだり蹴ったりの扱い。余りのいわれ様と過酷な人生に、心中涙が禁じえないくらいです。

たらればばかりだと収拾がつかなくなりますが、この人が子供を生んで長生きしていたらまったく先の流れは変わっていたでしょうね。

エリザベス一世にアルマダ海戦で敗れる君主ですが、そのまえに情報戦があったとのこと。フランスやイングランドに王妃を殺したとかあることないことデマを流されて、権威が失墜していたのだそうです。道徳的な基盤を崩されることが、一番ダメージが大きい時代だったとのこと。

今の首相は国民の付託によりますが、(その手続きがない分)日本も含めて近世以前の政権というのは、道徳に寄らないと権威をたもてなかったんですね。特に宗教改革の時期ですし。

現代でも、まっとうな意味での人間性、というのがもっと為政者に求められるべきだといえるでしょう。

そういうのがなおざりにされた上で現代では、官僚に対する能力による付託、というのが日本の裏の一番のシステムだと思うんですけど、このことの錯覚が最もひどいと思うんですよね。

戻って、エリザベスが結婚をしなかった意味が良くわかる回でもありました。特に何も悪いことをしていなくても、付け入る隙を与える可能性があるんですね。「慎重王」と綽名される君主ですが、さすがにそこまでは慎重ではなかった。この点でもエリザベスの方が慎重だったといえるでしょう。

父親のカール五世については、ヨーロッパ史上屈指の名君、と解説されていましたが、スペインはカール5世の時代に「莫大な資金を提供し、その結果すっかり疲弊してしまった」(「カール5世とハプスブルク帝国」(「知の再発見」双書) ジョセフ ペレ (著), 塚本 哲也 (監修), Joseph P´erez (原著), 遠藤 ゆかり (翻訳)101ページ)のだそう。

ちょうどルイ14世と16世の関係になぞらえられるのかもしれません。ルイ16世が苦境に立たされたのは14世の浪費がたたったからだという説があります。フェリペ2世もまた同じ立場だったといえるでしょう。

また、この豪壮な宮殿が植民地からの富によって賄われていることは付け加えるべきだったといえるでしょう。

インディオを使っていたポトシ銀山の記述ですが「安全を確保するための設備も必要なかったため、採掘の費用はほとんどかからなかった」(同上73ページ)というのは、原発にもつながるところでしょう。原発問題を西洋文明の歴史の中でとらえることは重要だと思っています。

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