また、そういうリアリズムが切れていく過程や原因に言及されていない。
せいぜいちょっとした仕組みの問題に矮小化されてる。
これは司馬遼太郎さんが「統帥権」でやったことでもあるんですがそれが拡大されています。
当時の人は殴られたとか劣化した日本人と接した記憶が生々しかったから、「統帥権」だけでは納得できなかったんですよ。人自体が駄目になっていたという強烈な体験がある。だから日本人の精神がどうにかなってしまった、という大枠が司馬史観にはある。
それに対してこのインタヴューでは、日本人の精神の衰えという大枠が外されてしまっています。
これではちょっとした組織の掛け違えで第2次世界大戦に突入したかのように読めてしまいます。
司馬遼太郎さんが「統帥権」でごまかしてしまった、この劣化こそが第2次世界大戦の悲劇の本質なのです。
それは宗教・文化を捨てたことによって始まったものであり、それは今も続いているというのが私の主張です。
昭和の司馬遼太郎さんに続いて現代人が見たい歴史を今度は平成人に向けて磯田道史さんがひねり出しているな、と観えます。
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