伊福部昭:舞踊曲「サロメ」
は1948年の戦後間もなく作曲された舞踊曲を1986年に作者自身がコンサート向けに改作したもの。
舞踊曲である身体的制約から離れて静かに終わる終幕から猛烈な終幕に改作したとのこと。
逆にこのヴァージョンですべて踊れたら評判になるかもしれませんよ。一旗揚げたい舞踊家の方はいらっしゃらないだろうか。
この曲が今世紀になって演奏されるのは初めてのことなのだそうです。
「伊福部昭:舞踊曲「サロメ」」のヴァリアントの「七ツのヴェールの踊り―バレエ・サロメに依る 伊福部昭」は先日亡くなられた故野坂操壽さんの得意曲目であって、テレビで追悼特集が放送された次の日にそのオーケストレーション版が演奏されるのも何かの縁でしょう。
藤岡さんの幕間のプレトークによるとアルトフルートという指示があるパートを世にも珍しいバスフルートという楽器で演奏することにしたとのこと。
その方がヘロデ王がサロメをいやらしい視線で視る感じが良く出るのだそうです。
曲がりくねった異形の形でフルートの方が持ち換えて出てきたときにはびっくりしましたね。
しかし音は何とも言えない爽やかな不気味さがあり、これでしか表現できなものは多そうです。
藤岡さんの持ち番組「エンター・ザ・ミュージック」はマニアック楽器紹介番組としての側面を持ちますので、そういう中で視界が広くなった中での最良の選択だったのかもしれません。
「天国の伊福部先生は許して下さると思う。」と許しを請うマエストロ藤岡。
この変更は「管弦楽法」を編まれた楽器マニアの伊福部先生であれば膝を打つに違いありません。
文学的な部分に注目してみます。
サロメのお話自体は原型が新約聖書にありますがそれにしてもユダヤ人の変態的なお話に仕立て上げたものです。
調べてみたら、オスカー・ワイルドはやっぱり反ユダヤ主義者だといわれているんですね。反ユダヤ主義はヨーロッパ文化のそこかしこに存在します。
「完全に狂っています」「土曜日の昼に話すことじゃない」と「サロメ」の凄惨な物語についてマエストロ藤岡は説明して笑いを取っていましたけど、どうなのでしょう。
結局これはヘロデ王の魔の手から逃れるにはサロメはこうするしかなかったということなのか。錯乱は究極の理性として物語の平衡が保たれているということなのだろうか。
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