サントリー美術館 IMARI/伊万里 ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器

#その他芸術、アート

行って参りました。

会期はじめの方だったというのはありますが、サントリー美術館史上でもかなりすいているほうの会場でした。

「染付牡丹文瓶 江戸時代・1650 ~ 1670年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」の解説によると、染付のコバルトは中国から輸入したものであるとのこと。これでは競争に勝つのは容易ではないですよね。

青花は明の時代になって西方との繋がりが断たれ、コバルトが入ってこなくなったことによって、品質が劣化したといわれていますが、日本に来たコバルトも、中国経由のイスラーム世界のものなんですかね?

「染付貼花獅子文手付瓶 江戸時代・1660 ~ 1700年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は「塩釉貼花獅子文手付瓶 1625 ~ 1640年代 ドイツ・ウェスターヴァルト窯 大阪市立東洋陶磁美術館」のかなり克明な写し。

炻器というのは東洋にはない区分ですが、見た感じも、やっぱり東洋にはない感じですよね。日本での写しの方がつるつるしていて光沢があって仕上がりが上だと思います。焼き物の技術は東洋の方が上だったんでしょうね。

「染付大根文皿 江戸時代・1660 ~ 1670年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は柿右衛門窯で焼かれたといわれる、大根をあしらった面白い器。

海外向けのは、華麗にしても、いわゆる自ら「ジャポニズム」を醸した、やや狙った一本調子のものが多いかもしれません。

一方日本向けのは、茶道系の禅味が必要というか、人の思考の枠を取り払おうという気概を感じさせる、奇抜だったり、大胆なものが多い印象がありまね。

「第2章 世界を魅了した I M A R I  1670 ~1690年代」のコーナーは1685年に体積による関税が廃止されてからの巨大な輸出品のコーナー。

「染付鳳凰文注器 江戸時代・1670 ~ 1690年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」はチューリプ文。「染付花卉山水人物文角瓶 江戸時代・1670 ~ 1680年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」はジンを飲むのに使われていたのだろうとのこと。

「染付芙蓉手鹿文大皿 江戸時代・1670 ~ 1690年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」の鹿柄は、鹿は禄に通じて縁起が良いとのことが。

「染付鳳凰羽文皿 江戸時代・1670 ~ 1680年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は国内向けの高級品だが、そういうのが輸出に回されることもあるとのこと。

「色絵花卉文輪花鉢 江戸時代・17世紀後半 有田窯 サントリー美術館」はいわゆる柿右衛門様式のにごし手。漢字の表記は「乳白手(にごしで)」でした。

「色絵相撲人形(二組) 江戸時代・1680 ~ 1710年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は相撲を象った作品。美術的な価値を高めるためか、躍動感たっぷり。多様なベクトルのかけ方、いなし方が観察できます。

「染付太湖石柘榴文髭皿 江戸時代・1680 ~ 1700年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は髭剃りだったり瀉血に使われたお皿が、半円形に欠けている下辺がお洒落だというので飾り皿になったもの。

日本は海外からのものを取捨選択して日本風にしてきたといわれ、宦官や科挙などが代表的に挙げられますが、このシーボルトなどが教えた瀉血を受け入れなかったのは、もっと強調されるべき合理精神だと思います。

福島原発のトルネード対策そのままで非常用電源が水没した事故もそうですけど、受け入れるなら受け入れるなりに、そこで「考える」という行為を挟まねばなりませんが、近代、特にこの事故の周辺では欠けていたといえます。

「色絵花卉人物文窓抜瓶 江戸時代・1690 ~ 1720年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は瓶が特徴的に窪んでいてその中に装飾が彫り込まれています。精緻な技で技術水準の高さをうかがわせます。

「色絵格子文角瓶 江戸時代・1690 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は、アフリカケープタウンのテーブル湾で1967年に沈んだ船から同じものが発見されたとのこと。

「色絵葡萄栗鼠文角瓶 江戸時代・1690 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は蒔絵調。

「色絵花卉文手付瓶 江戸時代・1700 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」はビール用。魯山人がビール向けの器を作るずっと前です。

「染付高蒔絵牡丹唐獅子文大壺・広口大瓶 江戸時代・1700 ~ 1740年代 有田窯 佐賀県立九州陶磁文化館」は高蒔絵で装飾された巨大な作品で、今まで観た伊万里の中でも特別感が際立っています。

「色絵花卉文鉢 江戸時代・1700 ~ 1740年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は天下泰平を意味する諫鼓鳥があしらわれた鉢。当時の絵画や文芸には「天下泰平」と本当によく出てきますが、それを史観の上から考えるとともに、当時の平和への願いや感謝を現代人も学び取るべきではないでしょうか。

「色絵美人文鉢 江戸時代・1700 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は見返り美人風で、欧州で好まれたとのこと。浮世絵ブームの原点のようなところがあるといえるでしょう。そしてこの絵柄の真の格調の高さを再確認させられます。

「色絵牡丹寿字文皿 江戸時代・1700 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」からの3品は繊細で美しい金襴手。

「色絵大壺文輪花大皿 江戸時代・1700 ~ 1730年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は伊万里が描かれた伊万里。

地下に下りると、東洋磁器に埋め尽くされた西洋の宮殿が壁一面に張り紙で再現されており、そこでの使われ方を意識したセットの作品が。チョコレートカップ、ティーカップ、コーヒーカップなど。

伊万里のコレクションはメアリー2世が嚆矢でハンプトン・コート宮殿に所蔵品があるとのこと。「日本宮」を建てたアウグスト強王がたくさん蓄集して流行したが、彼が死ぬとヨーロッパで磁器生産が始まり、中国が輸出を再開したことで、わずかにマリア・テレジアの治世にみられる程度であるとのこと。

東洋を「エデンの園」になぞらえるような思潮があったのだとのこと。日本での西洋趣味は依存的で批判されるべきところも多いですが、遠い国に思いをはせる、あこがれる、ということ自体は、人類普遍の感情で、自然な部分があるとも言えます。

「色絵花鳥文大皿 18世紀前半 オランダ・デルフト窯 サントリー美術館(野依利之氏寄贈)」はデルフトで作られた柿右衛門の写し。

「色絵美人文八角大壺 江戸時代・1730 ~ 1740年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は沈香壺。この中で香を焚いて、閉めておき、後であけて一気に香りを楽しみます。模様の布を噛んでいる女性は、いとしい人を待つ遊女を表しているとのこと。

一番最後におかれていた「色絵陽刻松竹梅鶴文注器 江戸時代・1730 ~ 1750年代 有田窯 大阪市立東洋陶磁美術館」は四つの足が人型に彫られている精巧な作品で、今展覧会中でも随一でしょう。やはり型ものであるとのこと。

戸栗美術館のようなマニアックな学術性はありませんでしたが、さまざまな伊万里を通観できた展覧会でした。ありがとうございました。

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