カザルス ホワイトハウス・コンサート メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番他

#音楽レビュー

メンデルスゾーンの品のよさに圧倒的な力、彫りの深さが加わって、超が付くかもしれない名曲になっています。
ホルショフスキーのピアノも、指回りの良さの中に、落ち着いた味があります。この人は晩年人気で、そっちのほうの録音は聴いていないので詳しくは分かりませんけど、歴史的にはどんな評価になるんでしょうねぇ。
第2楽章のアンダンテはシュナイダーのヴァイオリンの後ろで、ふつふつとサポートしているカザルスの存在感が効いています。

第4楽章はフィナーレらしい激しさ。4:30のピアノの瞬きなんかも、素敵です。うるさく聴こえないのに、破壊的な印象すらあるのが、この三人です。終曲の加速とか、激しいですけど、それでも古典的な枠内に収まっている演奏だからだと思います。

クープラン「チェロとピアノのための演奏会用小品」の「嘆き」は子守唄のようですけど、その内側に秘められた分厚さが凄く、あたかもげっぺいのようです。
「悪魔の歌」でもカザルスの自在な弾きまわりが、並ではありません。
カザルスの個性は指揮でも過剰なくらい際立っていますけど、あれ位でなければ、低音域の独奏楽器でここまで人にメッセージを伝えるのは難しいのかもしれません。

シューマンの「アダージョとアレグロ変イ長調」では、9分30秒辺りの力強さが独特で、演奏の一回性を感じます。
「鳥の歌」では本人のものと思われる唸り声がたまに。こういう曲があると、演奏会全体が締まる感じです。
天満さんの「望郷のバラード」はカザルスの「鳥の歌」を意識して入れているのかもしれませんね。

楠木がざわざわと葉を鳴らしているような演奏であり、その真の主役は枝の間からちらちらする、抜けるような青空だと思います。
カザルスというと精神性がどうとか言いたくなりますが、聴いていて単純に、生活に厚みが増すような音楽だと思います(笑)あわただしい(多分)年の瀬ですけど、腰を据えて何かしたい方がいらっしゃったら、どうぞどうぞ。

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