衛星で放送していた、N響の定期です。ヤンセンは宇野先生大推薦の若手。
CDジャケットの写真が女豹みたいで、一人で、めひょーじゃ、めひょーじゃ、と騒いでいたのですが、動いている姿を見ると、良い感じでふくよかな、健康そうな人ですね。
チャイコフスキーの協奏曲といえば、ちょっと前に放送された、庄司さんの演奏が遅いテンポの繊細さ極まる演奏で素晴らしかったです。宇野先生のよく言う作曲者が得をしている演奏、といえますが、チャイコフスキーの親しみ安さとは、違う世界に行ってしまっているのも確かです(笑)
ヤンセンもテンポが遅いですけど、こちらは、感興を濃縮するための遅さのようです。
弾いている姿も、横ではなく縦に揺れることが多いです。ここにヤンセンの音楽の傾向が表れていると思います。
指揮者のサポートもゆったりしていて、ニュアンスがあって良いですけど、独奏の所との音量のバランスを、もう少し取って貰いたいかもしれません。協奏曲だから仕方が無いのかもしれませんけど・・・。しかしそう考えると、ヤンセンは激情を持ちあわせた弾き手のようですけど、音量自体は圧縮されていて、意外と小さいよーな所もありますね。
それにしても、胸の上のほうの露出が素晴らしく、あと一センチ下がっていたら、放送事故にしか見えなくなるかもしれません(笑)
ピアニッシモも無音と最弱音の間を攻めている感じがして、表現意欲の高さを感じます。弓の毛と弦の間に、極めて細かい感覚が投入されているのが分かります。
緩徐楽章でも、小さい音量の中に、音楽を必死に刻みつけようとしています。魂で弾いている音楽家は誰か、と聞かれた時に、一番納得してもらいやすいのはヤンセンかもしれません。
明らかに無心で弾いていて、全体の事を考えている様には見えないんですけど、出てくる音楽は中々楽曲全体の均整が取れていると思います。
一つのパッセージを弾き終わった時に、ハンマー投げの選手みたいに、顔を前に突き出す事がある所が、可愛らしいし、渾心のものを感じさせます。
終演時のブラボーが凄く、音楽の内容を物語っています。富士山が噴火している、というと言い過ぎかも知れませんが、美しい激しさに、それに近い印象を与えられます。
アンコールの「無伴奏バイオリン・パルティータ第2番ニ短調 BWV1004 から 「サラバンド」」は聴衆全体を力で引き込むことによって、会場全体がバッハの音楽を発しているように、錯覚させる様な演奏です。ヴィブラートのかけ方が良い塩梅で、バッハの音に良い肉付けがされています。
凄く高い内容を持ちつつ、聴いていてどんな人でも納得させてしまう楽しさを持った、素晴らしいヴァイオリニストだと思います。
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