フラウト・トラヴェルソというのはフルートの前身の楽器とのことです。最初のソナタロ短調の第一楽章はバッハがこれまでに作曲した中で一番長いソナタ楽章だということで、中々長いです。当然ながら全曲ちゃんと確り作っていて、毎度感心させられます。
リコーダーの鑑賞の蓄積は余り有りませんが、ブリュッヘンのリコーダーの特徴は豊かなのと難しそうなフレーズでも非常にふんわりしている所だと思います。卓越した技術のなせる業でしょうか。文字通りソロの無伴奏イ短調では霊的なものさえ感じさせました。彼の時代にブリュッヘン程の使い手が居たら、バッハも更に凄い曲を書いたのではないかと想像させます(この曲も素晴らしいですけど)
昔の曲でしかもフルートの前身の物ですから古色蒼然とした趣がやっぱり一番にしますよね。薄暗い時の多い土地に人影もまばらな古城があって、そのちょっと先の森では農民が薪を拾っている・・・音楽の説明としては良く分かりませんがそんな情景が浮かんできました(笑)
フラウト・トラヴェルソのための作品集なのでブリュッヘンに耳が行ってしまいますが、周囲もレオンハルトとかビルスマとかクイケンとか大家中の大家で固めていて、大層迫力の有るCDです。チェンバロの音も非常に好きなので、聴いていて非常にしっくりきます。メンバーがフル稼働した協奏曲ニ短調はこのアルバムの中で一際鮮やかな色彩を放っていて、祭りの終わりの最後の花火の様にCDを〆ています。
鎮静効果といいますか、極めて聴いていて落ち着くCDです。それは曲の内容とブリュッヘンの自然な演奏がぴったり一致していることによって齎されたものだと思います。
曲の使い方とか俗な事を言えば、動く仕事からデスクワークに移る時に聴くと、極めてスムーズに切り替えられると思います(笑)
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