太田記念美術館 ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵初公開浮世絵名品展 後期

#練習用

今回は前回の北斎の肉筆帳のような圧倒的な出し物は無く、北斎と広重の版画が両雄並び立つ感じで目立っていました。
広重は何と言うか、絵の奥行きが非常に深いんですよね。それも西洋遠近法的な豪華な広がりというより、素朴な実際に目を細めて見てしまう様な深さがあります。「木曽街道六拾九次之内 洗馬」なんかが風の吹き方が実在感溢れていて素晴らしかったです。北斎の「大波」に対して「大風」と呼びたい位です。
ちなみに今回の展覧会は何か解説が大袈裟に思えるものが多くて、この洗馬には「秋の清冽な空気が伝わるこれほどの作品は他に例を見ない」と有りましたし、「歌麿画本虫撰」には「多色摺本版画で製作されたこの狂歌絵本は世界に類例が無い傑作」とありました。そんなに言い切っていいのでしょうか(笑)確かに「歌麿画本虫撰」は版画としては信じ難い瑞々しさを誇っていましたが。
広重では他に「東都名水鑑 玉川上水の源小金井堤の間を流」が良かったですね。暑い日に玉川上水の涼感は有り難かったですし、後姿に配された女性の視線の先の風景が想像されて趣深かったです。「市中女風呂の図」も良かったですけど、年を召された方をあれほどリアルに描かなくとも良いと思います・・・。
北斎は赤富士こと「冨嶽三十六景 凱風快晴」も良かったですし、特に黒富士こと「冨嶽三十六景 山下白雨」は圧倒的でした。山の山頂付近の不気味な天候や周囲のごつごつした感じが、霊峰らしい雰囲気で描かれています。しかしこういうのって全部凸版印刷なんですよね、笑ってしまう様な超技術です。この美術館の地下に現代の復刻版の版画が置いてありましたけど、色眼鏡で見てしまっているのかもしれませんけど線が微妙に大味な気がします。摺りの時代の差なのかも知れませんけど・・・。
北斎は他に「冨嶽三十六景 信州諏訪湖」なんかも良かったです。北斎の自然っていうのはなまめかしさに特徴が有ります。この絵の中央の木も、木っていうより苔が突然変異を起こしてすっくと立っているような印象です(笑)まったく独特なものです。
後はやはり豊国の「五代目松本幸四郎のかぶとや文五郎」が特徴的な大首絵で個性が有りました。
酒井抱一の「蚊」は扇子に蚊がうっすら何匹か描かれているだけなのですが、あらゆる意味で抱一らしいと思いました(笑)鈴木其一の「扇子売り」も行商人の平衡感覚が良くて、上手く売っているなぁ、と思わせました。
奥村政信の「佐野川の市松人形遣い」はユーモアが有って綺麗な感じですし、河鍋暁斎の「写生する美人」も意図的な感じですけど色気が有りました(笑)

しかし混んでいたから列に並んで見ていったんですけど、列の動きが速いんですよね(笑)何周かしながら見ました。種類が豊富で名匠のものが多く楽しめた展覧会でした。

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