次は金子三勇士氏でもう一つの故郷であるハンガリーの
リスト ハンガリー狂詩曲 第2番
で、これは原曲が大まかに書かれていてあとはピアニストが適当に手を加えてくださいといった感じらしく、金子氏はピアノを滅茶苦茶に叩いているような強烈な演奏を披露。
金子氏の技巧を表現するとともに、番組中で何度も言及するにはなんでも打楽器としてのピアノに興味があるらしく、そういったピアノの在り方が表現されていたと思います。これはもう「リトミカ・オスティナータ」を弾くしかないですね!
伊福部昭さんはヤナーチェックやタンスマンの影響を受けているそうで、自身の中の東欧的な要素が結合を求めたのもあるのか、東欧音楽の影響がとても強いです。
で書いたようなスラヴ系と日本人の感覚の近さというのもあります。
実際伊福部昭さんはストヴィンスキーモンゴル人説を唱えていたり、あそこら辺までは東洋だと思っていたみたいです。
とんでも説なのかと思えば、ロシアではモンゴルが去った後もモンゴル系の家系は貴族として重んじられたらしく、かなりその血が入っているのだそうです。モンゴル史の杉山正明氏はロシアの有名な芸術家など文化人にモンゴル系の人がいるという説があるが確認できないとしています。「モンゴル帝国と長いその後」((興亡の世界史) 杉山 正明 (著))(292ページ)
ただ本当に学術的に中立な判断なのか、伊福部氏の発言などに影響を受けたものが照り返っているのかまではわかりません。
それでなくともチンギス・ハンのずっと以前、古代にモンゴルから東に行った人が日本人になり、西に行った人はハンガリーなど東欧くらいまでに分布しているといわれています。金子氏はハーフ(ダブル)ですけど、DNA的にはノーマルなハンガリー人ということもできるような気もします。
「リトミカ・オスティナータ」のピアノの打楽器的な処理は金子さんが打楽器的なピアノを志向するのと音楽史的に無縁ではないのかもしれません。
もっとも日本的ともいえる作曲家である伊福部昭さんと、ハンガリーの伝統を受け継ぐ金子三勇士さんが共に打楽器的なピアノを志向するというのは興味深いことです。
演奏に戻ると、ロマの音楽であるという解説でしたが、そういう人たちが青空の下で楽しんでいるのが浮かんでくる感じで、同時に哀愁も感じさせます。
自分の演奏で泣いてくれるのがピアニストとしてのやり甲斐だといってらっしゃいましたけど、そういう泣ける要素が不思議なくらい入っていて目頭が熱くなりました。非常に思い入れを感じさせる演奏です。
こういうリストもあるのか、という驚きがあります。
また感想を述べられた観客の方もおっしゃっていましたけど、音の粒がしっかり揃っているのが演奏の印象を良くしていて、いろいろ聴いていて思うのは音がしっかり弾かれないリストは駄目ですね。
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