行って参りました。
日差しが凄まじくて、ゴム草履で相当歩いた為今グロッキーでちょっと眩暈がします。
ああそうだ、眩暈がしたのは暑かったからだけではない・・・
とか文学表現の世界は私から最も遠い所に有りますね(笑)
朝早く開館前に行ったんですねぇ、割引ってあるんですかね、何処かで手に入れられたんですかねぇ。
しかし平成館は流石ですけど、本館はキッチュで格好悪いですね。
威圧していますよ、あの建物は。俺は大層な物を所蔵しているんだって咆哮していますな。
壊して立て替えるのも一興だと思うんですけれどもね。予算の都合に加えてやっぱり貴重な文化財なんでしょうかね。
しかし、みんなちゃんと最初から回っていくんですよね。
僕は第3室から見ていきましたので、最初の1~2時間位は殆ど天皇御観覧状態でした(笑)
嬉しいんですけど、ちょっと物悲しい風習のような気もしないではないんですけれどもねぇ。
最初は酒井抱一(変換できた、流石!)の三十六歌仙図屏風でこれがみんな非常にふざけた表情をしているんですよね、文化サロンかく有るべしですわな。
次のに鈴木其一の作品が怒涛の如く並んでいたのですが、その素晴らしさには圧倒されました、というより凄まじく良うございました。
先ずは月下波上千鳥図がありまして、之に豪く感動致しました。
波の質感が素晴らしく、普段良く目にする墨絵が以いか平凡かが非常に良く分かりました。
やわらかいですねぇ、どこまでも柔らかいんですね。
更に青桐・紅楓図はこの展覧会で最も気に入ったものの一つでした。
葉っぱの繊細で柔らかい質感、落ちてくる雨のスッとした所、両図のコントラスト、こういう世界が有る事を学ばせて頂きました。
群舞図は人の質感に加えて色彩が素晴らしく、貝図はなにか面白味がありました(笑)
にしてもやっぱり弟子たちはちょっと落ちる(人によっては相当落ちてる(笑))し抱一よりも基一の方が個人的には感動しましたので、やはり基一というのは江戸の文化の絶頂を象徴する人間の一人なのでしょうね。
書き出すときりがないですねぇ。
とはいえ、今目録を見て絵を思い返せないものも有る訳で、それは狩野派の絵が多いですね(笑)
狩野派に対して批判めいた事を言っていた老婦人が横に居ましたけど、やっぱりちょっと様式的な所がありますよね。
四室では光の加減の趣向が思っていたよりずっと良かったですね。
光の加減でやっぱり特に屏風は見え方が違いますので、何か少し変化に乏しい所もあるのかもしれませんね。
抱一の十二ヶ月花鳥図は良いんですけど、音楽でいえばディベルメントな感じが漂う作品でしたね。
無銘の紅白梅図屏風は相当良くて、細かく梅を表現しているのが美しかったですね、近づいて観てようござんした。
自然に肉薄するか、一部越えたところのある様な屏風でしたね。
白象黒牛図屏風は有名なやつで、迫力があると共にユーモラスで笑ってしまいましたね。
有名な森狙仙の猿猴狙蜂図は猿の質感が流石でした。
四室は最後に凄まじいのが有りまして、円山応挙の懸崖飛泉図屏風でこれは何度も観てしまいましたね。
結局一番長く観ていたかもしれません。
応挙の絵はなんというか、型が決まっていますね。
崖はこう、水はこう、根っこはこうとか描き方の手法が、大体決まっているような気がしましたね。
型といってもそれは後世にまで大きな影響を及ぼす自らが独創した表現な訳で、音楽に例えればモンテヴェルディのオペラの様な物で、画面からは絶大な力が感じられました。
応挙といえばお宝探偵団で滅多に本物が出ない事で有名ですが、真筆の力は真に恐るべきものが有ります。
筆捌きは一見硬く見えるんですけど、真に力強くて、遠くから見ると実に柔らかくて構図の妙が感じられました。
ただ、常設展示に応挙の虎図が有ったんですが、静物の方が応挙は上手いのかなーと言う印象も受けましたね。これはこれでまた絶品なのですが。
というわけで、次は一室に戻ったわけですが、大渋滞で酔いそうになりましたね、うっぷ。
というかとっぽい男が一々彼女に意味の無い感想を大きな声で言っているのがとても嫌で(僻んでいる訳ではない)何とかなりませんかねぇ。
先ずは長沢芦雪の猛虎図ですが、肩がいかっていてなんか目つきも加えて人間っぽい感じがしましたね、というか人間の表現を虎でやろうという心が何処かに有るのではないかと思いました。
単に虎を見たことがないからというのは有るとは思うんですが、この時代の虎図に共通しますが、それだけではないような気もするんですよね。
芦雪の幽霊図があったんですけど、足が無い所が腰の上からないんですよね(笑)
足が無いというのは気配が無い事を表しているの思うのですが、気配を更に消そうとすると腰から上も無くなってしまう訳で、虚空を描いたような絵が最高の幽霊図なのかもしれません(笑)
次に待望の若冲の作品がずらっと並んでいたんですけど、どうも思ったより面白くないんですよね。
何かデザイン的な感じがして、筆捌きの質感が良くないんです。
一番良かったのが鷲図という奴で、晩年の墨絵なのですが、これに非常に感動した他はあんまり良くない。
葡萄図は流石でしたけど、若作は特に余りよくないなと感じました
・・・んですけど、さっき話した基一であるとか応挙が忘れられずに全部見た後もぐるぐる回っていたんですけど、その時遠くから若冲を見てはっと解ったんですね。
デザイン的な絵なんだから、遠くから見てデザインを味あわなければいけない訳です。
基一や応挙は逆で、構図は有りがちだったりするのですが、近づいて筆使いの妙を観察するとこれが堪らないんですね。
若冲は細密な描写で知られますが、近くで見るとこれが五月蝿くてどうもいけない。
それはそれで感心するんですけど、絵としてはそれではいけないんですね。
よく思い出してみると、プライス氏が自宅で若冲を味わうシーンがテレビで映されて居たりしたんですが、中空に吊るして結構遠くから見ていたりするんですよね。
若冲は無理矢理類型を求めるとすれば、何かルネッサンス期の西洋絵画のようなものに近いのかもしれませんね。
そしてそれは、応挙や基一に比べれば圧倒的にテレビ栄えがします。
テレビ画面に映る事で消えてしまう応挙や基一の精妙にして柔和な筆致に比べて、若冲はテレビに映ることで細部が視聴者の印象から消されて、鮮やかな色彩と構図のみが浮かび上がるので、逆に良く見える可能性すらあると思います。
また若冲の筆遣いの妙は勢いに多く見られますので、これもそのままテレビでも残ります。
逆に今応挙をインターネットで見たんですけど、観なければ良かったと思いましたね(笑)こりゃ駄目です。
なにか昨今の若冲ブーム、そして古の批評家達が何故若冲を見逃してしまったのかということの本質の一端が垣間見えた様な気がしました。
若冲のエキセントリック性とは構図であるとか表面にあるのではなく、その本質とそれを覗く為の鑑賞法の特殊さに拠るのではないかと思います。
そして「描いたものの感覚に思いを馳せ、その筆致の質感を見て取る」というかつての鑑賞法より当時では特殊な「精密な細部に支えられた全体の構図を見る鑑賞法」が偶然現代の人間が特に得意にしたものだったということなのではないでしょうか。
従来の江戸絵画とは本当に随分違うんですねぇ、それらと同じ鑑賞法で若冲を見てしまえば、本当に下らない絵だと思われてしまう可能性も無きにしも非ずなんですね。
で、改めて若冲を見ますと有名な旭日雄鶏図は流石に映えて絢爛としていますし、紫陽花双鶏図なんかも遠くから見ると何故か非常に迫力があります。雪中鴛鴦図の構図も素晴らしい。
にしても鳥獣花木図屏風はなんかあったというより、居たっ!ていう感じでしたね。
この作は若冲の真作であるかどうか疑う声もありますが、殆どの若冲の絵というのはこのモザイク画のエッセンスを含んでいる。この絵を見るような感覚で他の絵も味わえばそれは若冲理解の近道になるのではないかと思いました。
地味ですけど往来の人が最も感嘆の声をあげていたものの一つは花鳥人物図屏風です。
人の背中を丸一個で表していたりするんですよね。
大胆な省略と勢いのある筆致から若冲の作風の広さが伺えます、と、思ったのですが、大胆な省略を可能にするセンスは構図の急所を掴むセンスと同じものなのかもしれませんね。
そして、省略というよりは本質はデザイン化に近いものなのかもしれません。
次の曽我蕭白は意外と品があるように感じましたね。
そしてその横にある蕭白「風」の謎の絵が爆笑物で、何故か水島新司の絵に画風がそっくりなように感じたんですよね。
似たような人がいたんですかね。
名画は名画ですけど、まさにエキセントリックですね、これもやっぱり引いてみると迫力が凄まじいですね。
二室は竹田春信の達磨遊女異装図が受けました(笑)
本当は一々画像のリンクを張りたかったのですが、インターネットで絵を見ると本物の印象とごっちゃになってしまうので断念致しました。
見たい方は詳しくはhttp://f.hatena.ne.jp/fotocolor/yyで観てみてください。
他のも見てきたんですけど、刀の展示は興味深かったですね。
普段名刀なんて目にする機会はありませんからね(笑)
本当にスチールみたいな感じですよね、斬れそうですねぇ。
大好きな根付もあって、みんな良かったんですけど、猪木彫根付は素晴らしゅう御座いました。
という訳で書くのも疲れたんですが、観るのも大変でした(笑)
思ったより長期逗留しましたので、昼飯が欲しかったのですが、一番安いのがサンドイッチの880円で断念いたしました(笑)
そのまま南下して秋葉原を通って神田から中央線で帰還したのですが、秋葉原は幾ら二百年後とはいえこれが同じ東京なのかと思ってくらっと来ました(笑)
いや、これはこれでとても良いんですけどねぇ(笑)
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