通して聴くのは初めてなんですが、結構感動して素直に良い曲だなぁ、と思いました。ハイドンの曲の中では一番心に残りました。バロック~古典派にかけてはなんといってもモンテヴェルディが好きなのですが、柔らかくて自在な彼に比べて堂々として静的な所に個性を感じます。ハイドンの音楽の緻密で知的な佇まいは古典派のブラームスと言った所です。ブラームスよりゆとりが有る感じでは有りますが(笑)
しょっぱなのカオスの描写からして見事です。あやしげな靄が立ち込めるような感じが地上的に堕さず表現されている感じです。各部の終結部は壮麗な箇所を持っていてはっとさせます。
アーノンクールはやたら圭角の目立つ指揮者ですが、この演奏には全くそのようなことを感じず、むしろ立派さに昇華されているように感じました。彼とハイドンは性格的な面から考えても非常に相性が良いのではないでしょうか。
この天地創造を聞いて思い出したのは雅楽なんですけど、雅楽というのはお香のような物だと聞いたことが有ります。つまり積極的に聴いて作曲者の熱意や苦悩を共に味わうといったものではなく、場の空気を高める為のものだったというんですが、天地創造にも似たような考え方を感じました。名前の割にはドラマチックな変転がまるでなく、調和と適度な神聖さに満たされている感じで、四旬節と待降節に演奏されるのが恒例化されたとありますが、宗教行事にまさにうってつけです。この曲には西洋音楽が市民芸術になり始める直前の爛熟しきった瞬間の記録といった面が有ると思います。
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