2005年発売の天満敦子さんのオルガンとのデュオCDです。
アルビノーニのアダージョの天満さんらしい哀切の調子や、グノーのアヴェ・マリアの毅然とした祈り。陶酔に傾きすぎない夢のあとになどが良かったです。
”秘曲バラーダ”こと「望郷のバラード」も相変わらず不思議な曲で、特別に親しみやすいメロディが有る訳でもなく、弦が長く奏されるのが繰り返されるのが殆どといった感じなのですが、天満さんのヴァイオリンを得て悲しげな響きは是以上無い位です。今回はオルガンも控えめに要を得た活躍をしています。
天満さんは極彩色の出る太マジックの線の様な音楽を奏でる人だと思うんですけど、そうした骨太の音楽はオルガンと非常に相性が良い様です。とても馴染んでいて違和感は皆無です。悠然として神聖な趣はこれまでに無いものだと思います。天満敦子さんは極めて優れたヴァイオリニストなんですけど、その安定感故に庄司紗矢香さんの様な幽玄の美を感じさせない所が熱中する事を妨げて来ていたのですが、今回はその幽幻性を曲とオルガンで補って且自らもそれにシンクロすることによって、極めて崇高な響きを奏でています。表面的にはただヴァイオリンがオルガンに合わせて弾かれるだけですが、二つの個性(+選曲)に思いが到ると極めてユニークな一期一会の演奏で有ることが分かります。
プロデューサーの中野雄さんが天満さんのCDは聞く価値が有るから売れるんだと書かれていますけど、全く同意です。
世の中には物事を厳しく見ることで本質を開花させることの出来る人・職業と大らかに物事を見ることによって本質を開花させることの出来る人・職業の二通りが大まかに言って有ると思うんです。中野さんのプロデューサーというお仕事は後者の要素の強い職業ですから、そういう方が現代の演奏家に対して撫で斬りとも言える批判を行っていることには特別に深い意味を覚えます。
詰まらないのはあれですけど、地力の有る業界なのでいずれ何とかなるんじゃないかな~なんて僕は思ったりもするのですけど(笑)個人的に復活への道のりは、作曲家が全員で不協和音を止める事がまず第一歩だと思います。
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