ムラヴィンスキー ベートーヴェン交響曲第三番「英雄」

#その他音楽

ベートヴェンの交響曲の中でも英雄が一番好きだという方は結構いらっしゃいます。超有名曲である第5や第9が好きだというのはなんとなく面がゆいからというのは有るかもしれませんが、それにしても懐の広い音楽で有る事は間違い有りません。特に第一楽章は私もベートーヴェンの全交響曲の楽章中でベスト5に確実に入る位好きです。他の楽章も有名&名曲で全体としてもバランスが優れていて、まさにクラシック曲中のクラシック曲といえます。指揮者の力量を計るリトマス試験紙としても最も正確に把握し安い物の一つだと思います。

ムラヴィンスキー版は一楽章から色んなニュアンスが聴こえてきます。強い音の最後をふっと抜いたり、強奏後のメロディを弱音から始めたり。またそれらの逆で有るとか、そういう繊細な表現こそムラヴィンスキーの本質だといえます。
ムラヴィンスキーをセルとかと比べた評論を見ますけど、そういうのを見ると、あぁこの人は(ここでは)本当の表面を論じているんだな、と思います。
葬送行進曲のムラヴィンスキー版は冠絶していると思います。最早人間業では無い様な気も途中でして来ました(笑)彼のベートーヴェンは本当に背筋がぴりぴり来るというか―――――実演は更に凄まじかったと云うのだから想像を絶する話です。

ちなみにこういう大げさな風に聞こえる話を聞いて実際聴いてみると、全然そんな風に聴こえないと仰る方も居ますけど、普通の威力的な凄いというのとは全然違うというのを押さえて置くと分かりやすいと思います。ニュアンスを感じ取ろうという積極的な鑑賞態度が有って初めて感知できる良い音楽(といっても気楽で良いものですが)だともいえます。そしてそうして得た感動は受動的なそれより遥かに大きなものである事が多いと思います。

音楽に戻ると、第四楽章のコーダの所などあの世から光りが差してくるようで、最早音楽という感じも殆ど消えています(笑)本当に突き抜けた、聴いていて楽しい指揮者だと思います。

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