ブラームスを聴くと非常にほっとします。いやぁ、もう家に帰ってきた感じですねぇ。極楽極楽? ベートーヴェンは気分の乗っている時に聴けば良いのですけど、やっぱりリラックスはできませんね。フルトヴェングラーは自分の音楽がCD向きで無いのを気にしていたとも言われますが、このベートーヴェンの音楽のやや緊張を強いる性格を考えれば、実はそれはそもそもベートーヴェンそのものが備えていた音楽的性質でもあったのかもしれません。
というわけでクライバーのアタックはバイエルン響とかとやっている時よりやや柔らかいですね。ウィーンフィルっていうのは変わった団体だと思うんですよね。伝統伝統といっても実は偏見の塊で、伝統的な解釈から逸脱すると指示通り弾いてくれなかったりするそうなんですよね。このCDからもC・クライバー何するものぞ、という気迫が感じられます。そういう因循姑息な陋習は普通マイナスに働くんですけど、そのウィーン情緒と呼ばれている因循姑息の内容がオーケストラの表現と極めて相性が良いんですよね。当然といえば当然ですが。ウィーンフィルは良くナンバーワンのオーケストラだといわれますけど、やっぱり非常にクセの強い特殊なオーケストラで有るという面が強いですし、そういったことを再確認させてくれるCDです。
全曲に渡って内容が良いですけど、第四楽章が良かったですね。性格付けのまことに難しい楽章ですが、晦渋にならずに緩急を上手く付けて、情緒のある良い演奏になっています。この楽章はブラームスの宇宙であると個人的に思っているのですが、その宇宙の白図の星に彩色を施してその煌びやかな様を分かり安く示して呉れているような演奏だと思います。
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