浮世絵太田記念美術館 肉筆広重展  -初代から四代まで-

#その他芸術、アート

待望の広重の肉筆展です!しかし人が居ないんですけど(涙)僕はたばこと塩の博物館に来たんじゃない、と思わず思いましたが失礼でした。
広重って五代までいるんですよね。色々有りましたけど、初代の他は四代の短冊が良かったです。二代目は「桜下美人図」が良く描けていたと思います。
広重の肉筆画はやっぱり傾向としては錦絵のそれに似ていますよね。当然では有りますけど。端正で手馴れているんですけど、応挙と比べるとどこか野趣が有るのが魅力でした。後一番感じたのは朧な表現ですね。全体的に霧の様に霞んでいて、特有の奥行きに深みを加えていました。広重が描くとどんな風景でも霊場に見えるような所が有ります。天然の祠の如き「江ノ島」や海上に月が霞む「播磨室之図」とかがそういう長所が良く出ていたと思います。
「鯛海老鰹」も並べているだけの様で海老の配置等が綺麗で品が有りました。
「高尾太夫」は広重の若描きの美人図で太夫自身も魅力が有りましたが、奥の方にちょこんと何か背景らしき墨の染みが有ったのが眼を引きました。これによって多分後年得意にした遠近感をここでも出そうとしているんじゃないかと思うんですけど、だとしたら面白いですね。
一番良かったのは「月夜観桜美人図」で中央に書かれている女性の恰幅の良い存在感と、周囲の月夜の風景とのマッチが絶妙でした。

結構知られているかもしれませんが、広重の言葉が幾つかあったので面白かったので書き写してきました。遺書が二日続けて書かれているようなのですが、九月二日のものには

死んでゆく
地獄の沙汰ハ
ともかくも
あとのしまつが
金しだいなれ

九月三日のものには

我死なば
やくなうめるな
野に捨てて
うえたるいぬの
腹をこやせよ

と有って感心しつつ笑いました。三日のものには歌頭に「古歌。」と書いてあって、出典が有るか無いかは良く分からないのですが、流石は狂歌を良くした広重らしいです。
また絵の心得として

画ハ物のかたちを本とすなれバ写真をなして是に筆意をくわふるときハ則(すなわち)画なり

という文章が有って、写生に筆意を加えて初めてほんものの絵になるということですが、これを音楽(楽譜をそのまま演奏するもの)に変えれば

音楽ハ楽譜を本とすなれバ忠実な演奏をなして是に解釈をくわふるときハ則(すなわち)音楽なり

といえるかもしれません(笑)ライバルの北斎の言葉も名言揃いですが、さすがに広重も良い事を言います。広重らしい静寂が館内を支配していて、繊細な良い時間を頂けました。

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