山種美術館 秋の彩り―小林古径・福田平八郎・東山魁夷・安井曾太郎―

#その他芸術、アート

例の如くただ券を頂いたので行って参りました。
どうも日本の近代絵画はそこまで好きになれないんですよね。一つはなんといいますか、図案的なんですよね。静物の模写で一番良かったのは川﨑小虎の「草花絵巻」ですが、やっぱり北斎や鈴木其一と比べると植物のぬめりのような生命感まで表現しようという意欲が隨分低く感じられました。結果として絵が視覚の先の感覚まで行かず「絵」というより「図」に見えてしまうんですよね、厳しく言いますと。
でも秋というお題は好きで、紅葉の絵はみんな美しかったです。
識者で日本の風景を油絵で描くのは根本的に相性が良くないと仰る方は結構います。私も日頃から感じているのですが、何か不当に暗く感じるんですよね。湿度がうっとおしいと言いますか。そんな中で非常に良かったと思うのが奥田元宋の絵です。「玄溟」では紅葉の奥の山が霧に消えつつも圧倒的な存在感があって、前述のうっとおしい感じが凄みに変換されていると思いました。横山操の「湖の秋」も紅葉の鮮やかさで言ったら今展覧会で一番でした。
東山魁夷は「秋彩」がありましたが、そこまでは面白いと思いませんでした。東山魁夷はあんまり好きではないんですよね。綺麗ですけどどうしても表面的に見えてしまいます。
横山大観もそこまで好きな画家ではないのですが、今回あった「秋の色」は古代の日常を遠くから切り取った構図が良くて結構面白かったです。
人物画も江戸と比べるとどうもそこまで良いと思いませんね・・・上村松園とか、今回は無かったですけど鏑木清方とか、それだけで見ると十分良い絵なんですけど、あんまり熱中の対象にはなりませんね。ただ橋本明治の「秋意」は描かれている女性のポーズが、良く思いついたと思う位色っぽくて良かったです(笑)
今回最高の出し物はなんといっても酒井抱一(江戸人)の一連の作品です(^_^:)「飛雪白鷺」は上下に配された鷺の間を一筋の草が横切って描かれているのですが、この草のシュッと伸びた感じがなんともいえず、一瞬震えが走りました。「秋草」も月の残照の味が格別で良かったです。「秋草鶉図」も鶉の愛らしさと、これまた草の描写が鋭く品があって素晴らしかったです。
同じフロアにあった他の人の絵では奥村土牛の「秋富士」とかが良かったですね。この部屋の絵で、平面的な絵だなぁ。と思って見ていると琳派の影響を受けた絵だと解説があったりするんですけど、何か違うと思います。江戸琳派と言われる抱一は凛とした気品が有りますし、同室にあった伝・土佐光吉画の屏風絵も琳派の作品の中ではそれほど上等ではないと思うんですけど、それでも型の先になんとも言えない野趣のようなものがあって良かったです。
とはいえ前田青邨や速水御舟と言ったビックネームはやっぱり、日本画の余白の良さが有って流石でした。加倉井和夫の「秋肅」は蓮のような葉がほんわかして良かったですし、川本末雄の「秋耀」小島が浮かんでいるファンタジックな作品で面白かったです。
色々な作品が有って楽しめましたし、秋の美しさを満喫できた展覧会でした。

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