最終日に行って参りました。
伝菱川師宣の「二美人図」は、詩にその字体に女性のいなせな佇まいと、浮世絵のはじめにして完成の域に達している作品。味を加える前の岩清水のような絵です。
今回一番心に響いたのは英一蝶の「桜花紅葉図」です。短冊がゆらゆらしていて、紅葉はふわふわ落ちていきます。背景が微妙にぼかされていて、花びらは宙を舞っている様にも、水に浮かんでいるようにも観えます。
桜花図の方は、短冊に絡み付くように飛んでいる燕が可愛らしく、桜の淡さも素晴らしいです。
岩佐又兵衛の「職人尽図巻」は獅子舞のマント?の風の孕み方であるとか、とにかく動きがあって、動の絵師と言いたい感じだな、と思いました。
岩佐又兵衛が筆者であるという噂がある「江戸名所図屏風」も、一人一人に魂を吹き込まずには居られない(多分)筆者の精神がお見事。江戸初期で女性の髪形も比較的自由な感じで、女の子が輪になって遊んでいる箇所とか、面白かったです。
「異形賀茂祭図巻」はお化けが賀茂祭をしているんですけど、被り物を被るのと大して変わらないかも知れませんねぇ。
こういうお祭りがあったら、ピシッと気合を入れて、僕も全身に何か面白い衣装を着て参加したいものです(笑)
「四季花木図屏風」は相変わらず味わい深いです。能楽を聴いたりする時に浮かぶ情景そのままの様なところがあって、やっぱり同時代の芸能ですよねぇ。この時代の美術は枯れた所と力強い所が同居している感じです。
狩野安信の「松竹に群鶴図屏風」は上手いですけど、やっぱりちょっと狩野派の保守的なところが目立つ絵かもしれません。
焼き物は「色絵桜花流水紋皿」がうっすらひょろひょろした流水紋が、中々面白かったです。
陶片室ではベトナム製の「五彩花鳥紋皿」がバーナード・リーチを繊細にしたような、良いお皿。美濃大平窯の陶片も、茶色と灰色の中間のようなぬめりが良かったです。唐の白磁皿もたまらない清楚さ。
とても良かったのは、一角に設けられた西洋絵画を飾る場所のムンクの「けしの花と女」。何でもムンクの精神状態が良かった頃の作品らしく、怪しげな曲線が萌えるような新緑を表現しいて、素晴らしかったです。ちょっと屈んだ女性の姿態も美しいですし、けしの花は少女漫画の背景のようです。
同じく「楡林の秋Ⅱ」は平行感覚を失わせるような絵で、森が秋に揺れていました(ゆっさゆっさ)
前期と同じものも多かったですが、それも目当てでした(笑)良いものは何度観ても良いですねぇ。出光美術館は空間が良くて、いつ来ても楽しいです。ありがとうございました。
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