世紀の名歌手たち CD1

#音楽レビュー

録音が始まった頃の歌手たちを集めたCDです。
それにしても夏は暑くて、最新の録音から細かい音を聞き取るよりも、開け放して、昔の録音でも大らかに聴くのが丁度良いです(笑)

パッティ(ソプラノ)は女優だったそうで、歌よりも全体の雰囲気をコーディネイトしている雰囲気。音楽が切れるのを恐れていない感じで、積極的に利用して表現を高めています。
そのお陰で最後の節の絶唱など、張り上げないのにとても劇的。可愛らしい感じの歌手です。
テトラツィーニ(ソプラノ)はとても上手いコロラトゥーラなのに、地声で歌っているようにも聴こえる歌手。技巧臭がしない所まで含めて完璧です。品よくも、訴えてくる力が非常に強い歌手のようです。

シャリアピン(バス)はこの人も俳優らしく、この時代は兼ねている人が多いですねぇ。一種の総合的な職能人だったのかもしれません。
このムソルグスキーの歌は殆ど、歌なんだか映画なんだか、なんなんだか分からない感じで、西部劇のヒーローがピンチの時に独白するような空気がずっと続きます。

同じく有名なカルーソー(テノール)は深い陰影があり、イタリアの日差しが作る風景を思わせるかもしれません。
哀しくても笑わなくてはいけない場面らしく、老朽化したたるから石油が流れ出したような、ねちょねちょした感情表現が素晴らしいです。
ベルティーレ(テノール)の表現も木の実を熱してはじける直前の様で、実に見事です。
さっきのカルーソーとあわせて、昔の落語の映像を目にした時のような、現代とのギャップを感じます。

ロッテ・レーマン(ソプラノ)は場面が場面なんですけど、非常につつましい歌声。
乙女という感じでも、朗らかという感じではなく、一番先行しているのは優しげで、少し曇った雰囲気かも知れません。
指揮との合い方も素晴らしいです。

スキーパ(テノール)の声も、聴いて直ぐ独特な魅力飛び込んできます。何処までも高らかで、かつバランスも取れている感じの歌です。
ジーリ(テノール)はなにかずっと雨に降り込められているような声。強いところも晴れに転じるというよりは、じっとりした中で燃え上がります。個性があるので、役によっては非常に映えた人に違いありません。

メルヒオール(テノール)は均整の取れた感じの歌で、このCDの中では現代的な感じ。ワーグナーが得意だったらしく、長丁場をリリックに淡々とこなしていっただろう事が浮かびます。
モンテ(ソプラノ)は蝶々夫人のある晴れた日に、を歌っていますけど、テンポは遅めで寄りかかる様。海の向こうにまで伝わるように、遠くに声を投げて、間を入れているに違いありません(多分)どちらかといえば、乾いた感じの声のような気がしますけど、それでちゃんと自然に伸びやかに聴こえます。

集中して聴いて、すぐ終わってしまうような、楽しいCDでした。メインディッシュを一口づつ食べて、満腹になるような感じで、録音は完璧ではないですけど、クラシックの楽しさの大きな部分が入っていると思います。

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