行って参りました。
最初にあったのは当館所蔵の「春雪」。清方は印刷物で見ると白く浮き上がって見えるのですが、本物は透明感があります。
印刷について言えば、後で目録で「雪」を見たのですが、実物と余りにも違うので驚きました。髪の生え際とか、墨の上から水でぼかすのだそうですが、そういうものも中々捉え難いかもしれません。
この作品は、戦争が終わってすぐに発表したらしく、戦中は美人画を発表できる雰囲気ではなかったそうです。ショスタコーヴィチもそうですけど、時代と折り合わせる工夫を持っている作家は強いです。
「薄雪」はしみかどうか分からない様な、薄い雪が美しい作品。
「秋宵」はヴァイオリンを弾く女性を描いていて、大正ロマンを体現していて、よいです(^_^)
「幽霊」なんかも感じが出ていて、清方の作風の淡さと一致しています(笑)
「鍾馗」は清方らしいふにゃけた鍾馗で、もし光琳が描いたら、これに対抗するものができるかもしれません(笑)
一番良いと思ったのは「明治風俗十二ヶ月」のシリーズの特に4月で、桜と少女の溶け合った風情が絶品。清方はやはり生活を描いた人で、季節と人を取り上げるときに一等光ります。
清方は卓上芸術といって、展覧会用の大作よりも、親密な空間で鑑賞できるもののほうが良いと言っていたそうです。
時期的には、ちょうど大中寅二が大型のパイプ・オルガンより小型のリード・オルガンが良い、と言った時期と重なりますが、時代の流れがあるのかどうかは分かりません(^_^;)
清方は日本画家なんですが、琳派や浮世絵が好きな私には、あんまり日本画家というイメージがなかったんですよね。しかし、展示された勝川春章や鳥文斎栄之の絵を観て納得。日本画の伝統からある部分を切り取ると、確かに清方になるんだなぁ、と得心しました。
カタログの福富太郎さんの対談は面白いので、清方ファンの方は是非。
参考資料の香枕は枕の中でお香を焚く仕組みで、頭が燃えないのかいつも心配になるんですが、どうなんでしょうね(^_^;)
西洋で浮世絵が分かったのはゴッホやセザンヌでしたが、日本人で浮世絵が分かったのは清方だったようで、その孤高な雰囲気に美しき哀しさを感じます。
年方は浮世絵について教えてくれなかったらしく、復元作業をしていた人生だったという面もあったかもしれません。
前後期でほとんど展示が入れ替わる展覧会で、両方行って参りました(笑)
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