東京国立博物館 御即位20年記念 特別展「皇室の名宝―日本美の華」一期

#その他芸術、アート

動植綵絵はどうしても観たいので、行って参りました。
中々込んでいましたけど、出し物が出し物ですからねぇ(笑)

最初の海北友松の「浜松図屏風」は意外な出会いと言いたい位の、胸に来る名品。作者最晩年の境地らしく、川に橋が架かっていて松が生えているような、シンプルな作品ですが不思議に吸い込まれます。作品世界に飛び込む、観る人によってかなり変わってきそうな絵です。

伝狩野永徳の「四季草花図屏風」もうねる様な岩に乱れる花草が永徳っぽい、素晴らしい作品。感動は「檜図屏風」にも劣らないもので、下の方でひっそり咲いている青い花もかわいらしいです。伝ですからメインの呼び物にならないんでしょうけど、良い屏風なのは間違いないと思います。

同じく「源氏物語図屏風」は横の御婦人二人組みが、チェック柄が素晴らしいと言っていましたけど。確かに整然としていて、綺麗です。柳に吹き付ける風の強さが、室町末期に連なる雰囲気を醸します。貴族達の表情が豊かなのが特徴的で、これだけ生き生きとしているのは珍しいと思います。

伝ではない「唐獅子図屏風」は思ったより大きく、所々に巻いている毛は、不動明王の炎の様で、多分模しているのではないか、と実物を観て思いました。岩肌の迫力も狩野派の筆頭らしいです。
唐獅子図屏風の金地には西欧の祭壇画の影響がある、というのがテレビの永徳特集でしたが、逆にクリムトの特集を見ると、日本の金屏風の影響があるらしく、この時間差の影響のしあい方は中々不可思議です(笑)
この作品はペアらしく、狩野常信が描いた、もう一隻があるというのは知りませんでした(^_^;)客観的に観ても、特徴が薄く、作品的に数等落ちるといって良いと思います。

ここからは若冲のラッシュ。「旭日鳳凰図」をぱっと観て感じたのは、これは仏画なのではないかということです。彫琢の限りを尽くして描かれた鳳凰が、阿弥陀如来の様です。
またリアルな部分と、形式的というか抽象的な部分が上手く折り重なっているが若冲の特徴のようで、下辺の鱗のような波ですとか、魄の力が感じられます。

次は目録にはさり気無く「動植綵絵 伊藤若冲筆 30幅」と書かれているのですが、これは至宝としか言いようがありません。
国営漫画喫茶構想が以前持ち上がりましたが、日本を代表する文化を総覧する施設が無い、というのが一つの建設理由でしたが、代わりに動植綵絵30幅を常設で展示できる施設があれば、ちょっとだけ代わりになりえるのではないかと思いました(笑)

「桃花小禽図」が画面全体桃色で、好きな感じでした。
「群魚図」に使用例として一番古い、プルシアンブルーが使われていたことが、最新のトピックですけど、それ以外でも青を一点、効果的に使うのが若冲のセンスのようで、「芙蓉双鶏図」の上のほうの鳥なんか、周囲を清めるような雰囲気がありました。

とここまで観ていたら、いきなり知らないおじさんに話しかけられました。なんでも「雪中錦鶏図」の錦街若冲製という署名は、自分の店の所在地と絵の題名をかけた駄洒落なのだそうです。いきなり話しかけてきたのででむぱな人なのかと思えば、目を観ても確りしているし、知識も豊富で色々参考になりました。
なんでも以前に三の丸尚蔵館で公開されたときも展示替えの度に通って全てみたらしく、それと比べると、今回展示されたものはやはりある程度修復されているのだそうです。開館時間は10時から4時までで、江戸城の周辺は銀座と違って何も無いから、ただとはいえ、それだけのために行くのが大変だった、とぼやいていました(^_^;)
流石のプライス・コレクションもこれには及ばないだろう、とのことで、質は違いますけど同感です。誇張無しで、天上的とも言って良いような、特殊な空間が広がっていたと思います。
もう少し話を聞いていたい位でしたが、僕も観たいので、お礼かたがたお別れしました。

観ていて感じるのは、意外と熊田千佳慕さんに似ていることで、細かい反面、画面構成が静的なんですよね。若冲は「群魚図」で良く指摘されますし、「池辺群虫図」なんかもそんな感じですけど、どちらも躍動感がゼロで、どちらかといえば、場面を瞬間冷凍する事に興味があった二人なのかもしれません。

若冲といえば裏彩色ですけど、今回の修理で肌裏紙が黒色に近い濃灰色であることが分かったらしく、紙の渋い色調は劣化ではなく、若冲の意図であることが分かりました(笑)
雪も胡粉を表裏から塗って表現しているそうで、特に「芦雁図」の雪は盛り上がっているようにしか観えませんでした(笑)まさに眼光紙背にてt(以下略
紙の繊維は升目みたいなものですから、やはり升目の画家、デジタル的な画家だったという観かたも出来ると思います。

応挙の「牡丹孔雀図」は孔雀の壮麗な尾っぽに、応挙の伎倆の誇示が感じられる作品ですが、若冲の嵐の後では、ややインパクトに欠けます(笑)応挙はやっぱり次の「旭日猛虎図」のような、素朴で簡潔な絵の方がらしいです。

岩佐又兵衛の「小栗判官絵巻」は全体で324mあるそうで、なんのこっちゃ、といわざるを得ません(笑)流石に工房での製作だと思うのですが、全ての人物の顔がちゃんと又兵衛っぽいので、指示が飛んだのか人物だけ自分で描いたか・・・。

「花鳥十二ヶ月図」は酒井抱一の得意の画題のようですけど、抱一の枝ぶり、余白の美しさは日本画の中でも独特で、いつ見ても素晴らしいです。

原在中の「覇王別姫図」はくるくる剣舞する虞美人に、なんとなく余韻が香る作品。覇王とか覇道とかといった言葉は、想像以上に中国で悪い響きを持っているそうですが、日本においてこれらの言葉が時に積極的な意味に使われるのは、項羽の敗者の美学が日本人の心に響いたからではないか、とこの絵の項羽の覇気とうらさびしさに、気づかされました。

いきなり現れたので驚いたのは北斎の「西瓜図」。この作品は娘の応為の手が入っているだろう、といわれている絵で、町絵師に皇室が絵を注文することが異例なら、女性の手になることも異例でしょうから、二重に異例な北斎らしい作品。

高村光雲・山崎朝雲作の「萬歳楽置物」が力動感に嫌味が無い作品。
川之邊一朝の「石山寺蒔絵文台・硯箱」ですとか、明治以降は金工が素晴らしく、豊かさと時代の美意識の変化故なのかもしれません。
鏑木清方の「讚春」は女学生を描いたもので、セーラー服の芸術性にいち早く注目した所が流石です。

凄いものばかりで、もし東京国立博物館に対抗できる博物館があるとしたら、それは三の丸尚蔵館なのでは無いかと思いました。

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