楽しみにしていたので、行って参りました。
ミュシャは日本の漫画・美術に大きな影響がある作家。
「1900年パリ万国博覧会ボスニア=ヘルツェゴヴィナ館壁画(下絵)ローマ時代のボスニア叙事詩から」は下絵の線画なんですが、まさに少女漫画そのまま。すこしバタ臭いくらいでしょうか。
「1900年パリ万国博覧会『人類館』の第2案(下絵)」の解説によると、この頃は物質主義に対する反省が強まっていたそうで、その影響でミュシャはエッフェル塔の二階以上を解体しようと主張していたそうです。
中村元「仏教の真髄」を語る、という本の13ページに
「特に日本人は、西洋的自己の思想を中途半端に取り入れているために、個人的・社会的に問題が生じています。というのも欧米では、このような個人主義の一方で、行き過ぎた個人主義の暴走をキリスト教の倫理感がくい止めていますが、日本では宗教的抑制心が希薄になっているために、個人主義はわがまま、放埓と混同されがちだからです」
とあるのですが、個人の放埓を物質主義とすれば、万博での反省は、19世紀の頃から西洋がとりあえず、このようなバランスの良さを発揮し続けて来たことの表れといえるでしょう。
西洋は思想にしても、経営にしても、芸術にしてもこういうことが基礎になっていることが多いです。そして実はそこに、西洋がいろいろな分野をリードし続けてきた本質があると。
一方で日本での揺り戻しは、といえば、大正デモクラシーの時期にこういう文化的な傾向があることと、物理的に何も無かった戦争直後。最近の伝統回帰の風潮と三回目くらい、もしくは、本格的な揺り戻しは今が最初なのではないでしょうか。
東洋で宗教の代わりを果たしてきた、いろいろなものが混交した文化は、西洋から言わせれば宗教とも言い難い様な物で、科学と深刻な対立を引き起こすような類のものではないんですよね。
だからそういうものを洗練させ、大事にしつつ、そこに現代の智慧を加えていけば、西洋以上に整合性が高い、良い意味で放埓から遠い、多くの分野で良質の影響力を発揮できる国が、将来に向かってつくっていけるのではないかと思うのです。
「愛人たち」は横の人がモネっぽいといっていました。
どういう作家か、ということで一番感じたのは、非常に享楽的なんですけど、その裏に旧約の神といいますか、運命のような大きなものを感じさせる事ですね。
最初にあった、「ローマの火災を見つめるネロ」が典型的で、ローマの街が燃え盛っているんですけど、それを見下ろすネロの回りの人たちは裸。
晩年は民族主義的な作品を描き始めるのですが、プラハ市民会館市長ホールの「公正」ですとか、裏地になっていた力強さが、表にも出てきて、力×力、でバランスが悪いように思いました。
やはり精髄はポスターのような気がするのですが、「ルフェーヴル=ユティル社のビスケット「バニラ・ウェハース」」は余りにも典雅にウェハースを食べているので、吹きました(笑)
みんな凄いのですが、「四つの花:薔薇」の表情は実に魅惑的。花と並ぶと、花の精のようにみえる女性って、いらっしゃいますよね(^_^;)
一番良かったのは「四つの星:月」で、神秘的な佇まいが幻惑的。しかしこの人は何でも女性に見えるようです(笑)お客さんの中で、男の絵はやる気が無い、と指摘されていた人がいました。
アールヌーヴォー様式をやめた後では「少女の像」がきりっとし過ぎない良い絵。威儀という言葉は女性の姿だそうですが、そういう形容詞を使いたくなる作品。
「女占い師」は占ってもらっている女性が、みんな裸だったんですけど、そういうものなのですかね?
他の作家と違ってポスターが主なので、比較的開きやすいかなとも思ったんですが、絵画作品なども多く、それにしても、素晴らしい質と量だったと思います。ありがとうございました。
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