太田記念美術館 浮世絵猫百景 -国芳一門ネコづくし- 後期 その3

#その他芸術、アート

江川さんはまた、官邸前デモについて、不安の表明、と批評したみたいですけど、原発再稼動は監視体制が成り立っていない、活断層・もしかしたら活動期、再生エネルギーにシフトした方が経済的に潤う、などなど明らかに論理的に妥当な運動で、逆に関西電力は自社の利益を優先して動いており、嘘は果てしなく、サボタージュも酷いです。

ご自身のジャーナリストととしての責任を果せないまま、感情論的なものに矮小化して意義を減殺しようとしているのではないでしょうか。

また大津の事件でも、事実がわからないまま加害者を叩いている、といいますけど、子供のアンケートで既に明らかであり、これを根拠が無いとした学校の意見とこの点では等しくなってしまっていると思います。

もちろんエネルギーをこれから注意深く仕組みの変革に向けねばならないと思いますが、今の時点で国民が憤るのは妥当だと思うのです。

今回の事件のクラスの子供たちは、アンケートにいじめについて書くと呼び出されるような状況だったと聞きますが、この点では非常に良い意味で率直だなという印象を受けます。

大津の事件は、黙祷もしないのか、と当然の抗議を受けていましたけど、こういうことはやらない代わりに、テレビの会見ではしっかり日の丸を掲げていたりするんですよね。
枝野が国民に嘘をつき続けていながらも、(権威の源泉である)国旗のへの礼を欠かさなかった時も、非常に嫌なものを感じましたが、歪んだ男性原理という面から観た時に、共に本質的な課題を露呈していると思います。

今回ももう少しで叙勲される、といったことが絡んでいてごまかしている、という話を聞きますが、こういう仕組みも歪んだ男性原理であり、団子としての中央集権メインフレーム型を支える仕組みであって、廃止した方が良いと思います。
事なかれで行くと年金とかも全然違うような仕組みになっている、というのも非常に問題だと思います。

しかし、保護者の側も、生徒が亡くなった直後に集まりを開かずに、マスコミが報道してから開いたようで、そういうのは非常におかしいと思います。やはり、仕組みもおかしいですけど、すべて全員、おかしくなっているともいえると思います。

また7月15日のテレ朝の昼のニュースでは校長にモザイクをかけていましたけど、テレビ側の意味の無い責任回避のように思え、TBSビデオ事件に通底したものを感じます。暴走族にモザイクをかける意味も以前から話題になっていましたけど、こういう所は普通に放送するべきところだと思います。

宮崎のいじめ事件は川におぼれさせた側の加害者のインタヴューを、日曜日のフジの夜のニュースでやっていたのですが、川に行かなければ良かった、と発言。
運が悪かった、という発想で、問題になるべきなのは本人の姿勢なのに、そこを振り返る気はさらさらありません。
ぱっと浮かんだのは、仙石・前原・野田・安住といった面々の態度で、自分の中心を見詰める態度の欠片すらないのが共通しています。

しかしダルビッシュが甲子園での投げすぎはどうか、と当然過ぎる意見を述べたみたいですけど、この時期の甲子園ははっきり行って虐待そのもので、選手たちのためにならないと思います。辛ければ上達するという幻想や、もしくは軍隊的な発想でやらせているのではないでしょうか。明治以来の間違えた考えが凝縮されていると思うのです。

渓斎英泉の「吉原美人 扇屋内花窓」は藍色で品良くまとめられている、と解説にありましたが、前回の英泉の展覧会で当時はベロ藍が流行っていてなんでも青く塗りつぶしていた、と学習。格好も着物をかける普通の動作なのに、やはりどこか歌舞伎っぽく、まとめてみると見所が良く判るようになります。

鈴木春信の「風流五色墨 素丸」はしなだれた立ち姿が見事。

牧金之助の「佐賀夜桜猫退治」は切り取ってジオラマ風にできる浮世絵で、場面は猫に仮託しながらも忠臣蔵です。かなり面白く観ていてうきうきするもので、あんまり残っていない高度なおもちゃ文化の片鱗をうかがわせます。

肉筆画では北尾重政の「美人戯猫」がひっくり返っている猫の描写など見事な技術で、構図の瞬間を切り取った雰囲気も抜群。勝手に重文指定できますね。

佚齋樗山子の「田舎荘子 猫の妙術」は有名な武術書の当時の刊本で、マニアなら驚く所。理想が猫に託される、という部分に武術の本質が表れていると思います。

「枕辺深閨梅 口絵」は国芳の艶本ですが、本人の後姿が描かれています。

前に

古賀さんはよく自然災害特集などのコメントで、日本人は自然だから仕方が無いという風になりがちだけど、やることをやるべきだ、ということをいうのですが、私は自然だから仕方が無いといっている人は知らないんですよね。

と書いたんですけど、こういうコメントが出てくるもとの発想は「自然を対立した概念としてとらえる必要がなく、意識として確立できなかったのかもしれない。」(江戸の園芸 7ページ)といった認識が国内で積み重ねられてきたから、というのがあるでしょう。

しかし、今回の津波で明らかになったように、江戸時代人の災害に対する備え・情報の共有は高いレヴェルにあり、「氷川清話」(講談社学術文庫版 172ページ)などで海舟が言っているように、治水なども周到にやってきました。
洪水や山崩れを防ぐ為に、意図的に人の出入りを禁じて、山を雑木化し、領民には代わりに保証金を支払う、というような政策も実行していたとのこと。(全集 日本の歴史 別巻 日本文化の原型 青木 美智男 (著)  347ページ)
「「山川の掟」(中略)などは徳川幕府による総合的な自然保全政策と言えよう。」(江戸の園芸 140ページ)といったことなど、ほかにも、開発を大きく進めると同時に自然の保全をやってきた例は枚挙に暇がありません。これからは、「自然を対立した概念としてとらえる必要がなく、意識として確立できなかった」ではなく「自然と仲良くやっていく智慧を持っていた」と認識を転換するべきなのではないかと思っています。

ではなぜこのような、対立した概念云々、というような振り返り方が生まれたかというと、どうも和辻哲郎の言説が非常に大きく影響しているようなんですよね。

「わが国では風土に逆らうことなく、風土の恩恵をできるだけ受け入れ、和辻哲郎の言葉を借りれば、「受容的に、忍耐的に」人々は生きつづけてきた。」(江戸の園芸 134ページ)とのことですけど、これは「江戸時代は開発に次ぐ開発の時代だった。」(全集 日本の歴史 別巻 日本文化の原型 青木 美智男 (著) 350ページ)という実体と矛盾すると思います。

「このような美しい都市を成立させていたのは、幕府の政策によるというより、江戸の地形と気象が自らつくり出した(「風土」和辻哲郎著 岩波書店)と考えられないだろうか。」(江戸の園芸 154ページ)ともありますが、幕府を含めた江戸の人の自然に対する自覚的な努力を考えた時、これを気象が自ら作り上げた、というのは的外れで、人為を極めて過少に評価していると思います。前近代とはいえ、というかだからこそ、景観を壊そうと思えば一瞬なはずなのです。

おそらく和辻哲郎は見事に自然と調和の取れた日本の風景を見て、どうしてこのようなものが残ったのだろう、と思ったのだと思うんですよね。しかし当時は、江戸時代暗黒史観が支配していたので、江戸の行政組織や市民がバランスが取って築き上げたという発想に至らなかった。なので「受容的、忍耐的」であったからだ、という結論になったんだと思うんです。(これはちょうどこの前申し上げました「植民地化の大義」の話と上手くリンクすることも見逃せないと思います。(http://blogs.yahoo.co.jp/ffggd456/52782949.html)(http://blogs.yahoo.co.jp/ffggd456/52833077.html))
江戸時代を正当に評価しないことで、歴史から学ぶことが出来なかった一つの例で、それは今までの環境政策、そして今回の津波の被害にも大きなマイナスの影響を与えていると思うのです。直接的には、地名や津波の伝承の情報を生かせませんでしたし、環境政策の無策を「伝統」のせいにするような、無意識のマイナスは極めて甚大といっても良いくらいだと思うのです。

和辻哲郎は東西の精神の融合として評価する人も多いですけど、いわゆる「古寺」の見方ですとか、西洋的なアングルで、むしろお寺に現代に生きる気力を失わせてしまったのではないか。西岡常一棟梁も古いだけならそこらへんの石の方が古いと仰っていました。
著書を読んだ事はないのですが、間接的に聞こえてくる情報だけでいえば、エンタシス趣味とかもあまり意味があるとも思えず、ことばの厳密な意味でヘレニズム的な精神なのではないかと思います。芸術新潮の唐招提寺特集なんかでもエンタシスは揶揄されていましたけど、違和感を持つ人は私だけではなく増えているみたいですね。

「江戸は、都市とはいえ、西欧の都市ほどには周辺地域との違いが明確でない。江戸の都市と農村とは、景観的にも文化的にも連続していたが、江戸は人口密度が高いことで周辺とは異なる都市的な様相を示していた。(中略)そのため、西欧と市と較べると、日本の都市は大きな村落のように見え、第二次世界大戦前の東京でさえ巨大な田舎と言われていた。」(江戸の園芸 149ページ)らしく、周辺地域との融和的な関係も偲ばれます。(http://blogs.yahoo.co.jp/ffggd456/52697221.html

そしてそういった自然との融和的な関係を偲ばせるのが、この浮世絵に描かれた猫との親密な関係だと思うのです。当時の空気をとてもよく伝えている展示だったと思います。ありがとうございました。

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