太田記念美術館 江戸の美男子-若衆・二枚目・伊達男 前期 その8

#その他芸術、アート

行って参りました。

肉筆画の「風俗画帳」は若衆と遊女が会っているところを描いているのですが、釣り夜着なるものが部屋にあって、布団がつられています。なるほど、これであったかくて布団の重さは感じなくなるのでしょう。

宮川一笑の「色子(大名と若衆)」は題名通りのもの。
美男子という看板は、やおい系の暗喩だったのか!と展覧会の真の意図を悟ったのですが、一部分だけで、全体的にはいろいろな型の美少年を扱っていました。

また、やはりこういう企画だと、春画系統がない展覧会の限界も感じますね。こういった展覧会を回り始めたころにはそういう展覧会もたまには開かれるのだろうかと思っていたのですが、過去現在未来とそういうものは全く見かけませんでしたね。海外ではやっている模様。

今回企画をされた藤澤紫先生の剛腕にいつか期待できるかもしれません。

西川祐信の「美人寒菊図」はどこから見ても美人画なのですが、野郎帽子を被っているので女形であるとのこと。頭を剃ったのを隠す、そういうちょこんとした帽子があった模様。
こういう絵も美人画同様に人気があったのだそうです。

錦絵のコーナーの前では変遷が紹介されていて、鈴木春信は中性的な男をよく描いていたらしく、歌麿は男女の恋愛の中での男を。国芳は豪放な武者絵という特色になっていて、時間軸的には男臭くなってきているとも読み取れます。実際は江戸期にわたっていろいろな趣味が混在していたみたいですが、「守貞謾稿」には1842年の幕府の男色禁止令でそういう風習が絶滅した、と書かれているらしく、江戸時代の中でも近代化しているといいますか、現代の風俗の感覚に近づいてきているといえるでしょうか。

しかし、この政府の禁令は本当に効果があったんですね?ほかの禁令と同じく表面的な部分だけでしょうか。いつのどんな時代にも必ずそっち系の人はいますからね。

鳥居清広の「汐干狩」は女性が瀬川帽子なるものを被っていて、初代瀬川菊之丞が流行らせたものであるとのこと。女形のファッションが女性に取り入れられるということがあったもようです。

添えられている歌は「姫貝の肌やゆかしき汐干かな」というもの。

鈴木春信の「風流諷八景 羽衣の落雁」は流麗で風流です。
晴信春信の瀟洒さというのはこの大きさで実際に観てみないと分かりにくいかもしれません。

肉筆画では北斎の「源氏物語図」がさすがの傑作で朧月夜を垣間見る源氏を描いており、劇的で妖艶。ななめ上空から俯瞰する形で描かれ、立体的な構図の中に咲く桜も美しいです。

歌舞伎の歴史の中には顔立ちのよい人が多く中でも、三代目菊五郎は「どうして俺はこんなにいい男なんだろう」と楽屋で自身の顔を鏡に映しながらつぶやいたほどの美貌で知られた(ウィキペディア)とのこと。

歌川国貞の「御あつらへ三色弁慶」は立ち姿が印象的と解説にありますが、見えを切る姿がまさに絶妙です。

図録も出版されていますけど、気合の入った研究意欲を感じさせる特集で、とても楽しかったです。後期もありますのでどうぞどうぞ。

この日は帰りに代々木公園によってみるとちょうどブラジルの日で、ダイナミックな空気に満ちていて楽しかったです。お肉が焼いてごろごろ入っているだけの料理がブラジル風でとてもおいしかったです。

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