太田記念美術館 幕末の見立絵-三代豊国・広重・国芳

#その他芸術、アート

行って参りました。

見立て絵というと、先月の戯画がほとんど見立て絵といって良いもので、今回はどんなものなのだろう、と思ったのですが、文学や歌舞伎との関連、名所にちなんだものなど。前回の特集中で、特に戯画というものではないなぁ、といったものが集まった雰囲気もあります。

肉筆画の「宮川一笑 やつし菊慈童図 紙本一幅」は素晴らしくうまく風流。色彩も鮮やかなのできっと良い絵の具を使っているのでしょうね。

「川又常正 美人観瀑図 紙本ー幅」は瀧を見上げる女性の体軸が非常に美しい作品。

今回のメインの3人は同世代で、その作品には彫師や摺師の署名が入っており、「彫竹」「摺大久」などと書かれているものが多かったです。

流石に毛書きなど細かく、キメ出し、ぼかしに、精確な配色など素晴らしく、それ以前の世代と比べると、現代のテレビと80年代のテレビの画質の差のようなものがあると思います。さらには恐らく、簡素な下書きの上に彫師がかなりの分量を描き足しているのでしょう。

「三代歌川豊国・歌川広重 双筆五十三次 二川 安政2年(1855)4月」は同じ格好をした登場人物が二人で踊る歌舞伎の双面ものという趣向に取材したもの。

同じものが二人いることによって、個性が抽象化されて独特の幻想感が出るというか、そういう効果を狙っているのでしょう。

異同はありますけど、CLAMP先生のマルとモロとか、似たような意味があるのかな、と思います。

「三代歌川豊国 見立三十六句撰」のシリーズは同時代人の俳句の世界を絵に起こしたもの。ストレートに情景を起こすのではなくて、あくまで見立てであって、微妙にずれていて、それがまた意味深さや情趣を醸し出しています。

俳句は現代ではテキストとして伝承されているわけですが、絵と共に消費されてきた伝統があることがわかります。

「小倉擬百人一首」のシリーズは、掛詞風に百人一首と歌舞伎の一場面をだぶらせたもの。

同じく崩れが情趣を生んでいるとともに、だぶる部分もあります。伝統的な情趣の型である百人一首で、型破りな出し物である歌舞伎を解釈しなおしたものともいえるでしょう。

国芳の作品も多いのが注目されます。国芳のこういう面はあまり強調されませんからね。

同時代にたくさん作られたパロディ百人一首の一種であるとも理解できます。

当時の芝居などの文化へ精通していることが鑑賞の前提となっているものが多く、難儀もしましたが、雰囲気は伝わってきました。

マニアックな面白さがあった展覧会でした。ありがとうございました。

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