FUJIFILM SQUARE 企画写真展 ライフスケープ「森と海―すぐそこの小宇宙」

#その他芸術、アート

仁阿弥道八展を観て寄ってみると今森光彦氏と中村征夫氏の両巨頭による写真展が。まさに写真界のゼウスとポセイドンと形容できるでしょう。

置いてあった雑誌の対談によると二人の育ち方は似通っています。自然児のような育ち方をしたらしく、そのまま自然の中で仕事をしたいと思うと写真家という選択肢があったとのこと。

ただ幼少の体験が微妙に違っていて、中村さんは八郎潟周辺に住んでいたのですが、埋め立てられて無残なことになってしまった。そのうち国は減反政策をやり始める。そういった体験があったとのこと。

まさに現在行われている汚染に塗れた東京湾の写真のお仕事と一直線につながっているエピソードで、ああいう事業がこのような人を生み出したのだな、と感じ入るような嘆くような何とも言えない気持ちになりました。

現代の国家事業、事件はどのように青年を成長させるのだろうか、と考えさせられます。

一方の今森氏が住んでいた琵琶湖は大切にされていて、世界有数の古代湖である琵琶湖は水深が深く浅瀬を除いて埋め立てられるようなことはないとのこと。

ただ一時期護岸工事をされて、氾濫がストップ。するとなぜかフナが壊滅的にいなくなってしまったとのこと。

すでに自然に詳しかった今森さんはフナが氾濫期の水が混濁したときに卵を産むことを体験的に知っていたそうで、行政も氾濫させるように対策したところ、フナの数が元に戻ったのだそうです。

こういった親切があだとなるケースの一方で、人を含めての自然を重視しているとのことで、里山が一つのライフワーク。人の手が加わっているところの方が、放置された自然より自然が豊かなのだそうです。

こうやってみていくと自然と人の関わりには直観や思考を裏切ることがたくさんあります。

写真家はその最前線の証言者であって、人がわからない物を可視化するお仕事なのだな、と感じました。

写真はもちろん素晴らしいのですが、添えられている言葉も博識かつ詩的で素晴らしいです。事実に根っこを置いた学者という印象。またその知識をもとに切り取られる自然が格別で、観えている世界がプロならではです。

いままでこのエリアではたくさんの素晴らしい写真を観せていただきましたが、今回は写真家とはこれほど知的で創造的な仕事なのかと感嘆させられました。

日本は温帯にあって湿潤で、南北に長く山地が多く色々な標高の自然があって、世界の中でもとりわけ自然が豊かなのだそうです。

まだまだやっているので、通りかかったりしたかたはぜひぜひどうぞどうぞ。

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