2015年11月19日 東京芸術劇場 海外オーケストラシリーズⅢ フランクフルト放送交響楽団 指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ ピアノ:アリス=紗良・オット

#音楽レビュー

行って参りました。

プログラムの曲目は

グリンカ/歌劇『ルスランとリュドミラ』 序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23
ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 op.68

客席はほぼ満員。

大きなブロックで若い女性の団体がありましたが、学校ぐるみで勉強に来ている感じなのでしょうか?

最初の

グリンカ/歌劇『ルスランとリュドミラ』 序曲

は音色が飛び跳ねる明るい序曲。

指揮のオロスコ=エストラーダは身体を目いいっぱい使って、適切な指示を出し続けます。
音色の系統としてはC・クライバーの系列か。運動神経抜群でラテンの明るさ、鋭さを感じます。

ラテン的だな~と思っていたらやっぱりコロンビア出身なんですね。

チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23

ではアリスさんはシンプルな真っ赤なドレスで登場。

ポピュラーすぎる第一楽章冒頭。演奏はやや引き摺り気味な感じか。

定番曲を微妙に崩している感じですけど、とはいえ全体の流れを妨げないのがアリスさんの特徴。
常に内的にテンポが刻まれていて、そのテンポを中核に表情が彫琢されます。

これがややもすればリズムが途切れがちな多くのクラシック奏者と違う所で、現代人にとって聴きやすいところだと思います。

かといってこれは大衆性では無く曲自体が持っている音楽の普遍的な価値と言えます。普段クラシックを聴かない人でもうまく乗っていけると思うので、ぜひ聴きに来てほしいですね。

アリスさんの弾き方はどちらかというとベートーヴェン風。熱さをまとって疾走します。

初演で豪華で内容空疎と批判されたという本曲ですが、演奏によって内的な力強さが注入されています。

第2楽章はロマンティックな楽想ですが、ピアノには渋い熱気があり、さながらギターをかき鳴らしているよう。

第3楽章は本公演の白眉で、史上最高ではないかと感じさせます。

主題が跳ね馬のように生き生きと奏され、その躍動感は最高で、ややくすんだ音色に味があります。

オーケストラも同等の音色で応えます。打ち合わせが上手くいっているのか、指揮者の個性との相性が良いのかはわかりません。両方といった感じなのでしょうか。

あえて言うなら惑星が爆発したような力強さ。

ピアノの端から端まで使うパッセージでも素晴らしい技術と迫力で、スタンディングオベーションを呼び込みます。

アンコールの

グリーグ/抒情小品集 第10集 op.71-3〈小妖精〉

は単音の連続で畳みかけるアリスさんの個性が凝縮したような演奏でした。

休憩を挟んで

ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 op.68

は素晴らしい演奏。

テンポは速めなのか。最初のテーマはただでさえもたれるので、あっさりしていた方が良いですね。

曲想ごとに適切に表情がつけられていて、躍動感は抜群。

やっぱりC・クライバーを思い出させる感じ。ただ、あれほどスマートで鋭くなく、もう少し音色の豊かさがある感じ。

しかし詳しく書かないのは、そもそも私はこの曲をあまり聴かず、素晴らしい名演といえども曲と掛け合わせたときの感動の総和があまり大きくないからです。

先入観があるのかと思って虚心に聴いたんですが、やっぱりそこまでおもしろくなかったですね。。。。。。

私はブラームス党で、交響曲はもっぱら4か3ばかり聴いています。

ただそこそこの数の録音を聴いているので言えるのですが、相当良い演奏の部類だったと思います。奇矯な力強さで目立つ「名盤」がいくつか存在する曲ですが、そういったものより相当格が上の演奏だったといえます。

アンコールのブラームス ハンガリー舞曲第6番はオロスコ=エストラーダらしい、緩急が激しくおどけた楽しい曲。転調もあり、さまざまな表情をドラマティックに、俊敏に描き分けます。

全曲通して非常に質の高い演奏会でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました