伊福部昭:舞踊曲「サロメ」
は作曲が戦後間もなくで、その後の作曲のすべてを先取りするがごとく、あらゆる伊福部楽曲の断片、伊福部節がちりばめられており、手塚治虫のスターシステムを連想させるくらいです。
導入ではアラビア風の怪しげな旋律が入っており耽美的。
幻想交響曲のように斬首であるとか血まみれの曲想も多い。
伊福部音楽の安定性と剛毅さを味わえると同時に、聴いていて最初から最後まで毒を浴びせられたような上半身のピリピリとした感覚が止まらないのが、ほかの伊福部楽曲では全くない特異な曲です。
音楽が静かになったかと思えば強烈な畳みかけが始まることが繰り返される中で高揚感が高まります。
まさに息をつかせる間もなく、音楽にずっと吸い寄せられるようだ。
舞踏音楽だからか変拍子が多く、これが破調の芸術性を曲に与えています。
マエストロ藤岡は「前半はノーブル、高貴だけど後半は知性の欠片も無くなる」と曲を解説。その落差を楽しんでほしいとのこと。
マエストロ藤岡の指揮は基本的に品の良い感じでそのノーブルな部分は落ち着いた品格が妖しさを引き立てます。
後半の狂乱的な場面も引いた感じの客観性が構造のしっかりした芸術にしていたと思います。
これだけ錯乱していてごちゃごちゃした感じが一切無いのは伊福部氏の筆の奇跡であって藤岡氏の指揮の賜物です。
プログラムに挟まれた紙に、すぐにブラボーしないで下さい、と断り書きが書かれているのが珍しいのですが、結果的にブラボーが早かったと思う。伊福部楽曲では致し方ないことなのか。
奏者が退場しても拍手している人も多く、熱量の高い演奏会でした。
これは本当に私にとっては素晴らしい曲に奏者に構成でした。ありがとうございました。
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