日比谷公会堂 芥川也寸志メモリアルオーケストラ・ニッポニカ 第18回演奏会 <「日本近代音楽館」へのオマージュ>

#音楽レビュー

行って参りました。
会場はほぼ満杯で、当日券も数枚しかなかったんですが、なぜか結構良い席があいていて、幸運でございました。
結構人気がある催し物なんですねぇ。

パンフレットに鉛筆が挟まっているのが、はじめてみるもので、丁寧です。なかば研究発表なんですねぇ。
岩野さんの文章ですとか、とうとうとした流れと気合を感じます(笑)

最初の「深井史郎/ 大陸の歌(1941/43)」は大陸風の楽想で、第二曲らへんの木管の旋律に続いて、弦が包み込むように奏でる所など、けっこう魅力的。大きく歌うところも多く、本名さんの芸風と一体となって、良い音楽になっていました。
第4楽章は雑技団の背景で流れるようなおどけたメロディで始まり、コーダでは本名さん流の思い切った(多分)追い込み。本名さんは山田一雄さんの弟子だそうですけど、山田イズムといいますか、そういうのをきっちり受け継いでいる方なのではないかと思います(笑)

日本初演の「伊福部昭/ 管絃樂の為の音詩「寒帯林」(1945)」は、まさかのブルックナー開始。しかし、ブルックナーのように朗々とした主題が現れることは無く、しばらくして地味に主部が始まっても、違う楽器に引き継がれて、延々とトレモロが続きます(笑)作曲家自身の解説によると「シベリウスを想はせる」とのことで、ブルックナーは視界に入っていない模様。玄冥といいますか、ブルックナーは神にそういうものを感じていたと思うんですが、伊福部さんは寒帯林に、そういうものを感じていたのかもしれません。そして古来の神道を愛する伊福部さんのことですから、林の中に神も感じていたことでしょう。そういう心がブルックナー開始を呼び起こしたのではないかと思います。
それにしても、伊福部さんはシベリウスに評価されていたといいますけど、伊福部さんもシベリウスを評価していたんですねぇ。
この第1楽章「うすれ日射す林」は、表題から想像できるような、鬱蒼とした深みのある曲。

第2楽章「杣の歌」はきこりの歌声から取ったものなのだそうですが、その踏みしめるような旋律からは、どうしても、この前に美術館で観たタプカーラの絵の様な、踊りを思い出させます。

第3楽章「山神酒祭樂」はまさに伊福部節。ゴジラのメロディっぽいのが奏でられたかと思えば、交響譚詩っぽい箇所が頻出する激しい曲です。交響譚詩といえば、聴いた限りではsp復刻の山田一雄の指揮が一番良いと思うのですが、それよりもう少し柔らかい系統の、似たような情熱的な良い演奏だったと思います。

終曲直後、感極まった横のおばあさん二人組みから、「いつもこんなに素晴らしいんですか。私涙が出ちゃって・・・・・・。こういう所に来たこと無いから・・・」と、話しかけられました。オーケストラを聴くことはあまり無くて、親類が合唱のリーダーの方に習っていらっしゃるので来たそうです。
「ええ、、伊福部先生の未発表曲ですから」(大体)と答えて、良い曲でしたねー、と話していたのでした。

休憩をはさんで「深井史郎/ 「平和への祈り」- 四人の独唱者及び合唱と大管弦楽のための交声曲 大木惇夫作詞(1949)」は第九などから影響を受けた、大規模な曲なんですが、整った綺麗さの向こうから越えて、伝わってくるものが、余り無かったように思います。 古典的なところから借りてきた所に、微妙に不協和音を入れるところなどもあわせて、おあいそ的といいますか、常套的に感じました。

とはいえ、全体として楽しい演奏家でした。これからも色々な曲を、どうぞどうぞ。

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