磯田道史 司会 国際日本文化研究センター 准教授
渡邊佐和子 出演者 司会 NHKアナウンサー
赤坂憲雄 出演者 出演 民俗学者、学習院大学教授
高橋源一郎 出演者 出演 作家、明治学院大学教授
大島丈志 出演者 出演 文教大学准教授
松重豊 出演者 語り 俳優
では磯田氏はいつもと違うと言いつつ歴史的な視点から宮沢賢治の人生を回顧。
賢治は東京に出てきて大正自由主義の教育に触れ「赤い鳥」に投稿していたという話。最先端のこれを農村でやったのが賢治の人生なんですね。
当時の流行りなので意外と当時の岩手で同じようなことをやろうとしていた人もいたらしい。
農学校では教科書を使わない岩手の地質に即した教育を行い芸術の授業など総合的な自由主義教育を実践。
しかし治安維持法が成立し法律によって教科書を使って授業しなければならなくなり学校をやめることに。
この学校を私塾という形で継続したのが羅須地人協会なんですね。
しかしそこも警察に調べられ活動は低調に。
最近は私塾ってあんまりない気がするんですけど、考えれば図書館に勝る私塾はなかなか建てようがないですからね。そのせいではないでしょうか。
東北には中世の飢えの世界があり東京には近代があってそこがぶつかった所に現れた人が宮沢賢治、と磯田氏。「独立峰」と表現。
科学と芸術に対する高い信頼が感じられるとのこと。
科学によって農村を良くしようとしたのが賢治の人生だと番組では描き出します。
花壇の設計の話が出てきましたけど、あれは作物としての花の可能性を拓いて農村を豊かにするためなんですね。
親や自らも積極的に関わった花巻温泉を「魔窟」と呼んでいたことについて、農村の娘が歓楽街に売り飛ばされるということがあったからではないかと磯田氏。
しかし一時期そういうことがあってもこういう施設は全体的に地域の繁栄に寄与していくのではないですかね?
現代でも巨大プロジェクトを福祉に遣えばと思うことは多いですけど、でもやっぱりそれなりの効果をもたらすプロジェクトは多いですよ。
自分の童話は「この童話は、ありがたいほとけさんの教えを、いっしょけんめいに書いたものだんすじゃ。」だという賢治の残した言葉を紹介。
あれはすべて布教の一環なんですよね。
31歳で結核を発症したことについては身体を酷使したためと番組で説明。しかしやっぱり食べ方が悪かったんでしょうね。しっかり栄養を取れば農作業は身体によいはずですからね。
最後にスタジオは「本当の幸い」とは何かということについて激論。
大島丈志氏の色々な生き物がお互い侵害することなく暮らせるような社会というのはその通りですよね。
「本当の幸い」を探して突き進んで失敗してしまったのが共産主義だが賢治はそれとはまったく違う、と赤坂氏。
井上ひさしも書いていましたけど、賢治が共産主義に進まなかったのは不思議に思う人が多いみたいですね。
それは一つは仏教の熱心な信者だったことが関係していると思います。
スターリンであるとかキリスト教不信に陥る強烈な体験が彼を共産主義に進ませるわけですが、賢治の場合は仏教徒なので非宗教的な共産主義には進みようがないんですよね。仏教が持つ智慧が彼を共産主義から守ったのだ。
私は基本的には物質的な繁栄なんだけどそれでは全く足りないので「本当の幸い」という言葉になったのだと考えます。だから水道哲学によりもたらされた結果のようなものが一つの「本当の幸い」だと思います。現代日本にはそれがあるので後は仏教。それがあれば賢治は完璧だ「本当の幸い」だと思うんではないですかね。
高橋源一郎氏は書けない表現だと「本当の幸い」について繰り返し言っていましたけど、仏教を信頼している人にとっては結構あっさり表現できると考えます。宗教は排除される世の中で、仏教を無理に外そうとすると途端に難しくなるんですよ。
自分と世界は一体だというようなことや安心するということではないか、と磯田氏。
自他不二や安心立命は仏教の最重要タームですからね。
賢治を未来へのタイムカプセルとして大切にしたいと磯田氏。
番組中あんまり仏教に光が当たらなかったですけど、賢治と同じくらい仏教を大切にしてくれたら賢治は喜ぶと思いますよ。
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