追跡者ザ・プロファイラー「ヒトラー独裁者という名の怪物」

録って放置していた「追跡者ザ・プロファイラー「ヒトラー独裁者という名の怪物」」を観たんですけど、民主党政権末期に放送されたものなのですが、改めて安倍政権とそっくりでびっくりします。

内容の無い演説、特定の集団を敵視させるように追い込む政策、ナショナリズム、周囲にイエスマンばかりを配置するetc

陶酔して演説するヒトラーは気持ち悪いですけど、それに感化されて陶酔しているドイツ民衆はもっと気持ち悪いです。

本当にすべてが似ているんですけど、当時の映像をみていて思うのは、このころのドイツの民衆はこういったものが危険だという知識が無いんですよね。

今の日本人は一応は知識としては持っています。

安倍政権は悪いことをするにしても創造性が足りない。(もちろんナチスに創造性があったわけではなく、無理が通ってしまっただけですが)

「神話不足」といった言葉が浮かびました。

あと、演説時のプルプル動く感じがあまりにフルトヴェングラーの指揮姿に似すぎています。

やたら精神を高揚させる内容であるのも同じです。

ヒトラーのなかなか話し始めずにじらす演説術も解説。焦らし焦らされ、話し始めたときには爆風のような熱狂が集中します。

演説時間にもわざと遅れていっていたのだそうです。

フルトヴェングラーとは「溜め」が特徴なのも似ている。これはドイツ的な重厚な精神と解釈されることが多いですが、本当にそうなのかとすら思ってしまいます。

伝統的な、ドイツ的なものなのでしょうか?それより前のニキシュの録音は結構あっさりしていますよね。

特に戦後にフルトヴェングラーは溜める傾向が顕著で、宇野功芳先生は「重厚」と表現するのが常なんですが、私は神経質な性格が昂じただけではないかと思っていました。

これはいくら時代の精神が勝手に反映されたんだというようなことはいっても偶然とは片づけがたい。

こういうのをみると芸術とだけ切り離してフルトヴェングラーを聴きづらくなりますよね。

ヴェルサイユ体制に天皇制と、当時の日独は歪んだナショナリズムが醸成されやすい特殊な環境下にあったんだなということも感じました。ただ、ドイツに比べるの日本の熱狂はまだ甘い感じで、軍部の暴走という要素がこちらは強いのでしょうね。

名越康文さんの、日本でも今後ヒトラーが出てくることはあり得る、閉塞感が溢れている中で民衆は望んでいるんじゃないか、という警句は予言的。

武術雑誌の「秘伝」2012年9月号に名越さんのさらに詳しい分析がありますけど、これを読めたら理解が深まる人が多いでしょうから、全く分野違いの雑誌に載せておくのはもったいないくらいですよね。

ここではまずはマッチョ志向を指摘。

「男という性に対する欠落を感じて、男を補完し続けないとすまないという。」ということがあるらしく、ヒトラーはそれであると。

名越さんは前に、二世議員はタカ派になりやすい、といっていました。親を超えようと無理をしてタカ派になるのだとのこと。要するにマッチョ化するということですよね。

そういった欠落、と安倍のパーソナリティは非常に符合するところがあるように思います。

武術雑誌なのもあって「ヒトラーは受け身が下手」という表現を取られていますけど、逆に言うとうまい受け身とはどのようなものかというと、身体が上手くしなって、柔らかく使うことによって衝撃を吸収してしまうんですよね。

そういう身体性に裏打ちされた柔軟さがまったく無い、という指摘といえるでしょう。

番組は、実に気持ち悪い特集で、最初の恋愛エピソードから極度の病気です。

ヒトラーは妄想の世界に入ってしゃべり倒す以外にモードが存在しない印象で、直進する以外に機能が無い道幅いっぱいの車のようなイメージが浮かびました。そこには対向車に対する気配り、受け身のようなものは全く存在しません。下手というより概念がありません。

それであるところまで時代に乗って人生が上手くいってしまったこと自体も悲劇といえるでしょう。

ヒトラーは16000冊もの大量の蔵書をもっていたが、自分の論理の補強になるところしか読まなかった、とのこと。

これは歴史修正主義に特徴的な歴史の利用の仕方。都合のよいところしか読まなかったり捻じ曲げて無理やり都合よくするんですよね。

彼らにとって歴史とはそういうもので、いつも歴史がかわいそうだなと思います。

ネオナチは日本で言うと歴史修正主義ですが、ネオが付かなくてもヒトラーそのものが歴史修正主義的だったのがわかります。

結局は思考のバランスが全く取れていないのが根本的な問題だともいえる。

思想として脈々として伝わっているというよりは、あほな人間が再生産されて、体質を受け継いでいっている雰囲気。「伝統とは創造の連続である」とはこの雑誌で頻出するワードですが、それの最もマイナスの形がここにあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました