コーナーの秩序だった構成が特徴的で、宝くじでいえば連番的な展覧会。
「2 初期の浮絵群」は遠近法に焦点を当てたコーナーですが、西洋の美術館の北斎展らしいといえるかもしれません。
透視遠近法は奥村政信が得意としていたという解説。日本画の中で本格的に開花したのが北斎以降の世代と言えるでしょう。
「「浮絵一ノ谷合戦逆落之図」 横大判錦絵 天明年間(1781-89)」はその遠近法がよく生かされた壮大なパノラマ図。
「「新板浮絵 化物屋鋪百物語の図」横大判錦絵天明年間(1781-89)」はあらゆる化け物のアイディアが詰め込まれているうえに、それが全体で調和しており、背景も詳細に描き込まれた凝縮力の高さを感じさせる絵。
背景の並木は遠近法の実験めいています。
近景を細かく描き込んだ上に、凝った実験的な遥かな遠景。こういった要素がはダ・ヴィンチを思い起こさせます。
「「新板浮絵 両国橋夕涼花火見物之図」横大判錦絵天明年間(1781-89)」は人口が密集した超細密画。林の上辺が白いのは花火や月光の照り返りでしょうか。
この細かい版画を実現する彫師の伎倆も極まっています。絵の具の調合から色彩をすべて担う摺師の腕も確かなものです。
「「浅草金龍山観世音境内之図」横大判錦絵天明年間(1781-89)」は、厳格な透視遠近法じゃないのに違和感がないのが面白い、と横の美大生っぽい二人組。境内の色々なハトが丁寧に描き込まれていて絵に表情をもたらしているのが印象的。
「「新板浮絵 忠臣蔵」 初段鶴ヶ岡~第十一段目 横間判錦絵享和年間(1801-04)」の5枚目は激しい雨のシーン。横の二人組は「何か動いているように見える」といっていましたけど、これは北斎の絵の特徴ですよね。
11枚目は俯瞰と透視遠近法が混在した絵で、北斎に限らずこういうのは結構あったもよう。
流石に破綻しているといったような解説が多いですが、私はかなり好きな趣向。
構図としておもしろいし、懐を痛めて絵を買うのであれば色々な角度を楽しみたいというのは消費者の気持ちでもあるでしょう。
このシリーズは北尾政美の先行作があって同じく遠近法で描かれているとのこと。北尾政美こと鍬形蕙斎は北斎の絵の裏側に常に出てきます。蕙斎のウィキペディアには「北斎はとかく人の真似をなす。何でも己が始めたることなし」との蕙斎の非難が載っています。しかも蕙斎のほうが年下なんですね(^_^:)
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