日本橋髙島屋 追悼103歳 天に献げる地上の花 片岡球子展

#その他芸術、アート

券を頂いたので、行って参りました。
最初は若い頃の、大人し目の作品から。
お坊さんとか、ややもすれば重たい題材も多いのですが、線がでこぼこしていて、どこか余裕があります。その隙間から人間性がじわっと出てくる感じで、中々良かったと思います。

「潮」は方向性が定まらない、潮の狂い方が、ピラニアが餌を求めているといいますか、迫力があってよかったです。横に和服の女性が描いてあるので、御本人の人生行路が描かれているのでは、と思うのですが、中々大変だし面白いです(笑)

だんだん個性が前面に出てきて、「火山(浅間山)」がガシガシ絵の具を積み重ねた感じのカラフルな作品。
女性の絵師に色に対する感覚が優れている人がいますが、片岡さんにもそれに近い所があります。

「海(小田原海岸)」を描く時には「一週間海をみていた」そうで、「海が恐ろしくなくなった日から、海が描けるようになった」そうです。
大体ということで括っていえば、東洋哲学では、分けて認識していない時の状態で(無分節、無心)、具体的にものを見る、というような事を重視します。そしてそうやって見るために、じっと観察したりします。おそらく、球子さんは海が怖くなくなった瞬間に、海を消化しきって、分けて認識していない時の状態、になることが出来たのだと思います。
東洋的な方法に則っていた絵師さんだといえると思います。

絵は、真ん中に水がぬるぬる湧き出しているような岩があって、奇妙。赤が散らされていて、上辺の岩は野面積みの石垣のように無造作に分けられています。

富士山の連作で一番良いと思ったのは、やはり代表作といわれている「富士に献花」。
長い間富士と格闘していたそうですが、ステンドグラスのような花に、ともに対する感謝が詰っていたと思います。
それに他の富士は、富士のこういう面を描こう、というのが伝わって来るのですが、この富士はニュートラル。観ていて感覚が、固まらない感じが良かったです。

絵本では「いなばのしろうさぎ」のさめ(わに?)が面白かったです(笑)

肖像画は意外と大人しめの印象で、元絵にちょっと手を加えているようなものも多く、パソコン的でポップかもしれません(笑)
こうこうと燃えている日蓮が、雰囲気が出ていたでしょうか。彼らが現代生きていたらどうしただろうか、というようなことも書かれていましたけど、誤解を恐れずにいえば、日蓮はきっと小田実の超強化ヴァージョンのような感じになっていたのではないかと予想します(笑)

「面構浮世絵師三代歌川豊国・渓斎英泉」は三代豊国の確りとした美男子振りと、渓斎英泉の遊び人風の風体が並んでいて面白かったです。そうか、渓斎ってこういう人だったのか・・・(納得)。浮世絵師は肖像が残っている人が限られますけど、並べてみると鮮やかな個性の対照が見られるに違いないんですねぇ。

片岡さんの絵はエネルギーに溢れていて、崩し方も独特。展覧会を開いているお店全体を、賑やかにしてしまう位の絵だと思います。画風・題材も時代時代で結構違うので、生涯を通した作品展を開いて映える人だな、とも思いました。良い意味で親しみやすさもあって、これからも愛されていく作家さんに違いありません。

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