モーツァルトのCDの選び方は極めて難しいです。
宇野功芳先生がベートーヴェンは多少演奏が悪くとも感動してしまうがモーツァルトは駄目、と仰っているようにモーツァルトは極めて演奏が難しくて、天才の筆と演奏者の才能が乖離してしまったようなものが殆どです。
そうすると楽譜と演奏者の喧嘩が聞こえてきてしまうんですね。年末のアーノンクールの演奏なんか、違う意味で個性的であることを横に置けば典型的でした。
交響曲は大体シューリヒトに止めを刺すと思います。しかしそれでも録音が古かったり、小ト短の様にCDが無いものは(見つからないだけ?)とたんにチョイスに困ってしまいます。
だから同じようにシューリヒトの録音を持っていない魔笛の序曲なんかは、仕方が無いからカラヤンの古い録音を聞いているんですが、良い所も有る一方自然さを欠くフレージングも目立ち物足りません。
アバド/BPOのジュピター最終楽章の華麗にして壮麗極まる対位法なんかを聞いていると、これで他も要素も良ければなぁ~とか思ったりもします。
器楽曲は更に難しく、ピアノはハスキルが第一推薦なんですが、ほかは全く手探りです。ホルン協奏曲なんかはそこらへんのCDを引っ張ってきて、ロイトゲプとモーツァルトの友情でも想像しながらげらげら笑って聴くのが正しいとも思います(笑)
僕の非常に好きなクラリネット五重奏も例外ではなく、宇野功芳先生推薦のものではシュミードルは響きが楽天的に聞こえますし、ウラッハの録音も独特の味はありますけどテンポにメリハリが無く曲が生ききっていないと思います。
とういうわけで僕が普段聞いているのはこのエアチェックの録音です。別に希少だから評価を上げているわけでは有りません(笑)この録音の肝の一つはN響の愉快な仲間達のやる気の無さ自由闊逹さです。
無駄な表情付けやもったいぶった所が無く、図らずもかどうかは分かりませんがモーツァルト演奏の真髄の一端を示していると思います。当時の小谷口さんの様な有望な若手に対する、適当さ心の余裕が見て取れます。
もう一つは言うまでも無く小谷口さんのクラリネットです。暖かな音色は他に類を見ず、クラリネットという楽器の素晴らしさを極めて端的に知らしめていると思います。このメンバーでもう一度演奏してもらいたいですねぇ。
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