チェンバロ・レボリューション ~プティット・ロマンス~ 有橋淑和演奏

#その他音楽

古今東西の曲を集めた一枚丸ごとチェンバロのCDです。
弾かれている有橋淑和(ありはしすみな)さんは容姿と技術のみならず音楽性も優れている方のように思います。それにしても、女性演奏家はプロフィールに生年を書かれていない方が多いのですが、それでも大学の卒業年とかから有る程度逆算できたりするのですが、この方はそれすらも書かれて居なくて何も手がかりが有りませんね・・・・いや、構わないのですけど(笑)しかし、このプロフィールの写真の挑発的な眼差しは一体どのような意図でされているのでしょうか(笑)

最初のラヴェルの「スピネットを弾くアンヌ」はラヴェルらしい非凡さを感じさせる曲で、チェンバロがラヴェルの色彩豊かな曲を得て星の明滅の如くでした。流石ラヴェルとしか言いようが有りません。
ドニゼッティの曲は魅力的な旋律でしたが、もしかしてラヴェルと比べるとこれでも平凡なのかもしれません。
R・シュトラウスの「カプリッチョ組曲」も良くて、二番目のジーグは華麗な迫力が有りましたし、最後のガヴォットは殆どトランス系?の音楽の様でした。
伊福部昭さんが尊敬されている樣子のタンスマンの「前奏曲とフーガは」はブラームスの如き地味さでしたが、やはり同じく内容が豊かな音楽だったと思います。
信時潔は・・・・といいますか、これは民謡ですね。ここでのチェンバロはまさに琴の音色ですね(笑)本当に巧くはまっていて有橋さんの着想の勝利だと思います。チェンバロによる民謡演奏は一つの大きな領域になる可能性を秘めて居ますね。
チェレプニンは現代音楽ですね。伊福部さんがチェレプニンの作曲法に於ける指示に服さなかったという事があったそうですけど、当然の帰結なのかもしれません。とはいえ、力強い所も有りますね。
ショスタコーヴィチは壊れたゲーム音楽みたいで笑えます。ロドリーゴも見事でチェンバロの響きはギターにも似ているでしょうか?(笑)

このCDを聴くきっかけはやはり伊福部さんの曲が入っている事に縁ります(笑)最晩年にチェンバロの曲を作曲なさっていた事は知っていましたが、きっと良い演奏家に作曲意欲をかき立てられたのだと思います。
伊福部さんの殆ど最後といっても良い2曲は、東洋的な間を多用した極めて深い曲だと思います。枯淡の境地といえるかは分かりませんが(チェンバロに即して作曲した可能性もありますので)伊福部さんの本質だけが残ったような曲が、素朴なチェンバロと共鳴して自然に流れてゆきます。
有坂さんの演奏はCDの向こうからも凄まじく集中しているのが分かる感じで、それが緊迫した空気を生み出して素晴らしかったです。間の意味深さも素晴らしければ、緩急の急に於ける技術・気迫も最高でした。
ただ色んな可能性がありそうな曲で、もっと寛いだ演奏も聴いてみたいですね。

最後のジャン=ジャック・ベリー&ガーション・キングスレー(2人共存命!らしい)の「バロック・ホーダウン」、世に言うディズニーのエレクトリカル・パレードのテーマは本当に楽しいの一言で「もし大バッハが現代に生きていたら作ったであろう世界を再現している」(解説に載っている作曲者談)と共に一流のジャズ曲の様な印象も受けます。この曲から夢の匂いを嗅ぎ取ったディズニーの審美眼にも脱帽です。

チェンバロの素朴な音は昔から大好きなのですが、その長所を発揮するには幾つかのの条件が有ると感じました。
チェンバロに即した曲である事と、演奏者がチェンバロの特徴を掴んでいる事が重要だと思います。このCDは大いにその両方を満たしている、チェンバロひいては古楽の味わいが好きな人には涎が出るようなCDだと思います。
伊福部さんに惹きつけられて聴いたのですが、演奏家の方が素晴らしく、思った以上の楽しさをもたらしてくれたCDでした。伊福部さんが曲を献呈される方の腕前は何時も実に確かで、色々紹介して貰っている様な形で、逝去なされてなお感謝の念が絶えません。

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