最近聴いてきた一連の録音の中では最新のもので、気のせいかもしれませんが、表現が円熟してきている様な気がします。フランス組曲の録音と比べると、良くも悪くも表現のひっかかる所が減った感じです。
平均律クラヴィーア曲集第1巻はバッハが一オクターブに入っている十二の音の一つ一つに長調と短調の曲を付けた、24組の曲集です。
5番の前奏曲のぜんまい仕掛けのメリーゴーランドがぐるぐる回っているような感じが楽しかったです。21番の前奏曲もバロック・ホーダウン(エレクトリカルパレード)を思わせる快活な楽しさが有りました。最後のロ短調の2曲はバッハらしい美しさを内包した滋味が感じられます。このロ短調のフーガは全曲中最長で、フィナーレの曲で有ると共にバッハの個性を最も強く感じます。きっと気合を入れて作ったに違い有りません(多分)曽根さんの演奏も表現意欲がとても伝わってくる素晴らしい物です。
曽根さんがパリでの見聞を綴られた「いきなりパリジェンヌ」を読んでみました。今の言葉で言えばスィーツな題名(失礼)ですが、曽根さんは人柄に嫌味が無いし、確乎とした技術を持った演奏家なので、楽しい文化レポートとして素直に読めます。
フランスの秋葉原という項目があったので、おっ、フランスにもそんなオタッキーな町が!と思ったら電気街のことでした。97年出版の本ですし、当然といえば当然です。
「テロで危険なパリにいるなんて!!」と言われたという記述も有りますが、バスク関連でしょうか?今とでは意味合いに隔世の感が有ります。
フランスで盆栽が流行っていたなんていう話も有りました。
後は独学で一切習わずに料理を勉強して、ミシュランから三ツ星を貰ったシェフの話が興味深かったです。
丹念にネタを拾っているのが分かる、丁寧で寛いだ本だと思います。
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