「五つの四声フーガ」はバッハの曲を、モーツァルトが弦楽四重奏用に編曲したものです。バッハの落ち着いた進行に、モーツァルトの動的な要素が加わっていて、かなり面白いです。天才の競演と言う以上の、何か一種の、特殊な空間が展開されます。
「アダージョとフーガ」は、所謂モーツァルトの短調で、悲劇的な雰囲気さえある、深刻な表現を聴くことが出来る、晩年の作品です。
ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第13番」はベートーヴェンの弦楽四重奏の中では親しみやすい感じだと思います。一瞬ですが、プレストの覇気のある音楽は、この作曲家の楽しみがかなり入っていると思います。第五楽章のロマンチックな音楽も、演奏ともども素晴らしいです。
最終楽章は大フーガと呼ばれる有名な作品ですが、この作品は個人的に、河口俊彦老師が理解出来ない、と書かれて居たのが印象的に残っています。ベートーヴェンの定評のある作品を切り捨てているのですから、今思えば趣味人としてはある程度思い切った表現だったとも思います。氏の文章は若い頃は辛気臭いな、と思っていたものですが、最近文章を書いていると、時にボキャブラリーに関して影響を受けている事に気付かされます(笑)連載を読めないと結構寂しいものです。今思えばバッハの様な文章だったかもしれません。
所でこの曲は、派手で分かりやすいビートを刻んでいて、単純にかなり楽しい曲だと思います(笑)音楽の歴史上でも最強クラスと断言できる、ベートーヴェンの凄まじいパワーが炸裂しています。聞いた事が有るだけですけど、「駅馬車」という映画が「地獄馬車」という邦題になりそうだった、なんていう話が有りますが、この曲の副題なら、「地獄馬車」というネーミングはぴったりかもしれません(笑)フーガが繰り返される車輪の音のようです。
ハーゲン弦楽四重奏団も熱演です。クセになるくらい良いと思います(笑)全曲魅力的なCDでした。
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