タイトルは「心の癒し」ですが、そういう目的で借りてきたというよりは、単にパロットのバッハを聴きたかっただけです(笑)癒し路線はクラシック最大の呪縛、と言われますけど、どんなものでしょう。あんまり生ぬるいものを聴いていると、きっと逆にストレスの溜まる人もいますよね。「癒し」と一言で言いますけど、本当の癒しというのは中々生半ではありません。
そういう意味で言ったらパロットのバッハは結構本格的な意味で癒しな感じなのではないでしょうか。
パロットはバッハの頃は原則として、一パートを一人で歌わせていたのではないか、という学説に従って演奏していますが、その効果は際立った霊妙さに表れています。声が少ないので声が空間に広がっていく様までCDに入っているような感じがするんですよね。その空間の残響が絵の余白のような深みを生んでいます。また、合唱の様に声色が平均化されないので、細かい表情も残ったままです。
もっというと侘び寂びの雰囲気すらするので、日本人好みかもしれません。
モテット第五番「来ませ、イエスよ、来ませ」が凄いです。ポリフォニックで切実で、伽藍の様な演奏になっています。パロットの中でも最も良いもの一つだと思います。
カンタータ198番の「されど候妃よ、御身は死に給わず」は透明で強い声の絡み合いが、壮麗です。全曲に亘って演奏に無理が無いので、バッハの滔々として自然な音楽が、じっくり味わえます。
パロットのバッハを聴いていると抹茶アイスが浮かびます。渋くて甘いと、そのまんまですが(笑)
私が聴いた事が有るパロットのCDの中では、愉しさということではベストです。世の中の多くのバッハのCDの中でも出色のものだと思います。
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