行って参りました。
まずは数点の肉筆画を。
国貞の「七代目市川団十郎の暫」は団子のような衣装の内側の、動き、熱気が想像できる、見事な役者絵。
国芳の「桜下身づくろいの芸者」は武者絵風の捻りが効いた、力強い美人画。
広重の「立美人図」は余白を大きく残した、ぽつねんとした女性像で、広重らしい余韻があります。
錦絵は広重の「尾上松緑」が腰が絶妙に屈んだ凄い形相の老婆姿で、右手に草鞋、左手は親指で地面を指した形の激しい役者絵でした。
豊国の「雪」は豪奢な着物を着た女性がポーズをとりつつ、裾を少したくし上げるというもので、綺麗だったんですが、この絵師は写楽を追い落とした、なんて紹介されることも多い絵師で、そういう目で見ると、この衣装ですとか、顔ですとか、綺麗事的な俗な感じもあったかもしれません(^_^;)
国芳の「山海名産尽肥前国伊万里焼」は煙の表現が素晴らしい作品ですが、これは多分彫師の伎倆による所が大きいのではないかと思います。彫師は歴史の表には登場しませんが、恐らく北斎、広重クラスの「芸」を持った人も多く居たのではないかと思うことがあります。極上の水墨画のような躍動する煙には、高い品位が感じられます。
「東都名所佃島」は写実的な絵で、当時の小舟に揺られる感覚を味あわせてくれます。武者絵のデフォルメが特徴的な国芳が、風景画になると控え目な真実味を見せてくれるのは、不思議な感じです。
広重の「浅草奥山貝細工」は画中の兎・鶴・松は貝で作られているらしく、本物と違いが分からない位でした(笑)貝殻が勿体無い、という素朴な感覚から作る事を思い立ったのではないかと想像します。大河ドラマで話のアクセントとして、是非再現して欲しいですねぇ。
他に国貞の「鰐石文蔵」は50歳まで大関だった力士だそうで、江戸時代は色々なことがあります(笑)しかも小兵だったようです。
本能的に周囲をうろうろしてしまうのは広重で、風景画でこれだけ鮮やかに魅せてしまうのは一種の異能だと思います。全て良かったんですが、一つ挙げると「京都名所之内 あらし山満花」が余りに典雅でじんときました。
通常展ですが、みんな素晴らしかったです。書き残した綺麗な作品もたくさんあったんですが、意外とそういう作品は有名になっていない気がします。時が経つと本当に核の部分に焦点が集まるのかもしれませんね。良い展覧会でした。
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