太田記念美術館開館30周年記念 江戸の彩 -珠玉の浮世絵コレクション- 前期

#その他芸術、アート

成人式の日に行って参りました。
特別展ということで、肉筆画が多めで、地下もめ一杯使った、豪華めの展覧会です。

最初の菱川師宣の「遊女物思いの図」は遊女は寛いでのんべんだらりんとしていますが、控える威儀を正した禿が気品を代弁しています。
東川堂里風の「蝶を見る美人」は懐月堂派っぽい絵ですが、ハンカチを咥え、蝶をみている図で、はるかな目線とあわせて、なんとしても内面を描こうという気迫があります。
磯田湖龍斎の「雪中美人図」は春信の影響が濃いとありましたが、手を大きく振り回す所作は湖龍斎の個性そのもの。春信風の少女っぽいフォルムと併せて、独特の味に仕上がっています。

今展覧会で一番感動したと思われるのが北尾重政の「見立普賢菩薩図」。象に普賢菩薩に見立てた遊女が乗っているのですが、そのうっすらとした雰囲気が最高です。含んだ笑みには勁さとはかなさが!
着物も色が曖昧に混ざり合っていて、藍地に濡れたような桜の花びらが綺麗でした。
解説によれば「遊女の表面的な美しさだけではなく、仏のようなおだやかさや上品さも見事に捉えているようだ」とのことです。浮世絵の作品を観て来て感じるのは、浮世絵師の遊女の人たちへの尊敬で、やっぱり人間性が好きだから、名品が生まれるのだと思います。

鳥居清長の「真崎の月見図」は代表作らしく、月までの空間を描いたような、清明な構図に、夜のおどろおどろしさが出ていて、立体的な味わいが。

二階に上って北斎の「羅漢図」はどう観ても怪物です(笑)煙がたなびいていて、何をやっているのかは良く分からないのですが、覇気があれば人間格好良いものだなと思います(笑)
描かれた年は1846年で87歳だったそうです。衰えを感じさせない、と解説にありましたが、本人によれば死期に向かって全盛期に近づいているはずで、実際そういう感じがします(笑)

蹄斎北馬の「浅妻舟」は英派得意の画題らしく、実に丁寧な描写。蹄斎は社会批評的な眼を感じさせる絵もあるので、狂歌が得意だった一蝶的な所があったかもしれません。

大蘇芳年の「歌川国芳肖像」はどれだけ江戸っ子だったんだ、といういなせな姿。芳年については清方が涙もろい人だったという話を残していますが、師匠を慕う気持ちも人一倍強かったのでしょう。その優しさが後進を育て、歌川派の系譜を現代まで残らしめたようで、妄想想像を働かせれば、向こうに現代まで辛うじて伝わった浮世絵の命脈が観える絵です(笑)

磯田湖龍斎の「雛形若菜の初模様 丁子屋内若鶏」はこの作品以降浮世絵の主流が、中版から大判になったそうで、やっぱり有名な作家は、何かしら時代を前進させているものです。

歌川豊春の「浮絵 歌舞伎芝居之図」は歌舞伎の興行を、確りした遠近法で描いた絵。大人気らしいのですが、はっきりいってぺちゃくちゃ話していたり、集中していない人が多く、以前に江戸東京博物館でみた歌舞伎の古い映像の歩き回る観客を、をさらにごちゃごちゃにした感じです。
そこら辺の事情は、オペラと同様なのかもしれません(笑)
歌川派の始祖が、遠近法に熟達していたというのも面白いですよねぇ。

喜多川歌麿の「蚊帳の男女」は解説に蚊帳を彫る彫師の技巧に注目、とのことが書かれていましたけど、この柔らかい質感を出すのは尋常では無いですよねぇ。蚊帳を描いた作品は他にもありましたけど、この絵のものは一等上手いと思います。
鳥文斎栄之の「略三幅対 女三宮 衣通姫 小野小町」は、伝説の美女達に当世風の衣装を纏わせたそうで、ポップな魅力が素晴らしいです。栄之の絵はすらっとしていて、勝手に気品が付いてくるのが素晴らしいところ。
女三宮の構図は春信の「女三宮と猫」に似ています。小野小町は雨乞をしていて、色々な伝説がある人です(笑)

歌川豊国の「役者舞台の姿絵 高麗や」は丁寧な描写に、くいっとした指の表情が秀逸。
同じく「六代目市川団十郎」はどうも13歳で團十郎を襲名したらしく、享年は22歳。はようございますね。

版本のコーナーでは歌麿の「潮干のつと」が流石の筆力で、貝を描かせたら歌麿の右に出るものはいないかもしれません?
北斎の「絵本隅田川 両岸一覧」は棒が画面を突き破っていて、其一もこういう表現は好きだったなぁ、とみていました(笑)

特別展ですからわずかに高いですけど、気合の入った展覧会で、ぜひぜひどうぞ。前期と後期で大体の作品が入れ替わるようです。

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