サントリーホール 東京交響楽団 第579回 定期演奏会 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63  指揮:マーク・ウィグルスワース ヴァイオリン:庄司紗矢香

#音楽レビュー

行って参りました。
当日はP席が無かったので、どんとA席で。
ミッドタウンから歩いていくのが、一番良く知っている道なんですが、雨だったので、六本木一丁目駅から直行。・・・と思ったんですけど、なかなか難しくて、山を上り下りしていたら、いつの間にか溜池山王駅に。
ゆっくり夕食を食べる予定だったんですが、着いた時に開演まで十五分しかなかったので、あらかじめ買っていたパンを速めに食べました。

まずはワーグナー:楽劇「パルジファル」第1幕への前奏曲、から。

ウィグルスワース指揮が結構素晴らしくて、ゆったりとしたテンポの、弦の音色が美しい演奏で、この曲にこういう神秘性があったんだな、と思いました。それでいて、チェリビダッケのような特殊なところまでは行っていない。あくまで普通の演奏の中で、そういう美しさを醸していました。
北欧の人なのかな、と一瞬思ったんですけど、イギリス出身らしく、そっちの系統のそよぐような爽やかさ、ともいえるかもしれませんね。

ブラームスの2番もオーソドックスながら、大きな流れの中で上手く変化を付けた演奏。緩徐楽章のリリカルな感じから、コーダの結構苛烈な追い上げまで、芸域が広く、余裕があります。
最近の指揮者はかしゃかしゃと捌くだけ、といった感じの聴きたくない演奏をする人が多いんですが、この人はそうではないですね。派手なジェスチュアは無いんですが、表現意欲もとても強いものを持っている感じです。
ただ命を懸けた弱音(懸けなくてもいいですけど)、とかそういうのはなくて、細部の工夫の無さ、短いスパンでの扁平さを感じました。この造形を保ったまま、もっと表現を彫琢すれば、良くなると思いますよ(何

なんでも振るんでしょうけど、今回2番を振ったのが分かるような芸風でもありました。3・4番の濃厚な世界の感じの人ではないですね。

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63 では庄司さんは真赤なドレスで登場。
庄司さんは相変わらず凄くて、緩急の付き方が、静止した稲光のように付くんですよね。最早緩急という感じでもないのかもしれません。トップランナーの人が心を感じないと言っていましたけど、もちろん前向きなコメントで、もっといえばそもそもが抽象性を志向している様な芸風だともいえるかもしれません。
プロコフィエフは作った感が強い感じがする作曲家で、前に聴いたショスタコーヴィチと比べても突き抜けた抽象的な世界には至っていない感じでしたが、それでも、獲物を狙って疾駆するような、生き物的な、生々しい瞬間が連続します。

あんまりいうのも少し恥ずかしいのですが、やはり非常に生々しい、というのが庄司さんの演奏の特徴の一つだと思います。それは身体のスキンシップみたいなもので、即ちかなり本質的にえろてぃっくな演奏家だといえるのではないでしょうか。

ぱらららぎゅいんぎゅいんと乱高下する中に、濃縮されたパッションは相変わらず冠絶しています。繊細で、鋭敏な嗅覚を感じさせる演奏です。
以前より、音色がやや低めに聴こえたような気がしたんですけど、楽器の違いなんですかね?

アンコールの「パルティータ第1番より 「ブーレ」」はさらに凄まじいです。庄司さんは史上最強のバッハ弾きの様な気がします(笑)躍り上がる音色の間に覗く深淵が真っ玄です。

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