東京国立博物館 没後400年 特別展「長谷川等伯」

#その他芸術、アート

行って参りました。
到着して衝撃。長蛇の列で50分待ちだそうです。土偶人気も中々でしたけど、等伯人気は凄いものです。
丁度横を職員の方と思われるお姉さんが小走りで走っていたので、「いつもこんな感じなんですか?」と聞くと「ええ、今週に入ってからは、毎日こうです」とのご返事。この日だけだったら、そうだ、動物園へ行こう、と思ったのですが、毎日だったら仕方がありません。覚悟を決めて並んだのでした。
並んでいるうちにも列はどんどん長くなり、入場できそうになる頃には倍くらいに。チャップリンがばらばらと出てくる映像がありましたけど、あれが拡散しないで、そのまま列になっていく感じです。

列に並んでいると、百円玉を発見。どうしたものか、元に戻しておこうかな、と思っていると「募金みたいな所に寄付したら」との横のご婦人のご託宣。展覧会を観終わった後に「落ちていたんですけど募金箱とかありませんか」と本館のカウンターの人に聞いたら、「ありがとうございます」と微笑まれ、そのまま受け取ってもらいました。結局募金にはならなかったんですかね?

最初の方は初期の仏画の嵐なんですけど、とりたてて感想が浮かばないので、そこまでは凄くなかったかもしれません。まぁ、技術習得期間ですかねぇ。

「海棠に雀図」は枝に雀がとまっている平凡な構図ですが、牧谿調の雅趣溢れるものではなく、雀の親子の仲良さを描いた、ほのぼのとした小春日和な雰囲気が絵から漂ってくるもの。
ネットで調べると個人蔵だそうで、個人がどうしても持ちたくなるような魅力を持った絵なのだと思います。

「達磨図」は等伯の精密な感じが生かされていて、塊になってくる岩のような迫力が、絵師の達磨図ならではな感じです。

「山水図」は如拙の「瓢鮎図」を思わせるような世界が、明治に描かれたような生き生きとした墨で。
等伯関連の番組で能登の風景が映し出されることが多いですけど、能登というのは自然に風景を見て自然に山水画がかける、日本唯一の地なのかもしれません。

黒山の人だかりの「山水図襖」は忍び込んで一瞬で仕上げたという噂の作品。
天を突く崖に志の高さが現れているようであり、それは桃山の様式とも言えるかもしれません。

「羅漢図」は観ていると横の人が「こういう不良いるよね~」といって、通り過ぎていったのですが、そういわれると確かにそういう眼の切れ上がった顔。羅漢図はそもそも暴悪大笑面風の変わった顔が多いのですが、ふっきれた境界と関係があるのでしょうかね?

「臨済・徳山像」は臨済の体全体が胆石で出来ているのではないか(不健康)、と思うような漲り方が凄いです。
「伝名和長年像」は巨大な像主の回りに小人のような家来がいる図で、当時から笑いながら鑑賞する絵だったのだと思います(笑)(多分)

「花鳥図屏風」は松のうねった形がXゲームの若者の様。
大仕事の「楓図壁貼付」は絢爛で精緻。地味な色の楓に技と気迫を叩き付けて、名品にした感じ。久蔵さんの桜の絵も観たかったなぁ。

竹の描き方は絵師の個性が出ますけど「竹林七賢図屏風」は何といいますか、材としての竹を想像させる感じです(笑)
「牛図座屏」は裏も何か描かれていたんですけど、見えない仕様で、斜め後ろから見ようとしている人が結構いました(笑)

「松に鴉・柳に白鷺図屏風」は出光美術館所蔵で解説には、等伯は「親子の愛情を表現するのに強い関心を持っていた」と書かれていて、私も等伯のそういった面が一番心に残りました。
等伯は秀吉の時代の絵師と言えると思うんですけど、ぽっと出の所とか、秀吉と共通点の多い人なのかもしれません。

「老松図襖」ら辺の作品は牧谿の写しなのですが、この前の伊福部昭さんの楽器に寄り添った曲の話でいえば、水墨画に至適な表現は牧谿でかなり完成してしまっているのかもしれません。

その牙城を打ち破るべく「松林図屏風」は、テレビで今までのどんな作品にも似ていない、と紹介していましたけど、うっすらさせて想像力を喚起させる方向性はやっぱり牧谿調ともいえます(笑)
対決展では観られなかったので、実見するのは今回が初めて。
近くで観るとぼんやりしているというよりは、荒々しさのある線が作り出す流れが印象的。それが一本一本と全体にあって、得体の知れない、枯山水の引く渦のようなものを感じました。
近くにあった「月夜松林図屏風」は写しなんですが、やっぱり全然違いますね。水墨画は線に込められた刹那、時間を鑑賞するような所がありますから、そこら辺がやっぱり甘いんだと思います。

一人でこれだけの人を呼べる絵師は、他には余り居ないのではないでしょうか。
ちょっと外れた絵師ならではの、堅実な卓越した技と、清新な感じが合わさった、みさせる展覧会だったと思います。方々からの作品の収集ですとか、お疲れさまでした。

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