歴史秘話ヒストリア「大発見 歌麿の最高傑作 巨大美人画に秘められた真実」とリプニツカヤ

#その他芸術、アート

ヒストリアの「大発見 歌麿の最高傑作 巨大美人画に秘められた真実」は流転の来歴をやるというので、どのような経緯で古美術商が手に入れたのか、ということを解説するのかと思いきや、今回発見された「雪」以外の「月」と「花」だけ。いったいどこに行っていたんでしょうねぇ?

しかしパリに流失してしまうというのが悲しい。明治時代の日本人は日本画がわからなくなってしまっていたんでしょうね。

それにしても巨大な凄い作品で、私は一つ行方不明の三部作の大作があるという噂を聞いたことがあるだけで観たことが無いんですよね。やはり浮世絵は海外の美術館を回らないと知ることができないということなのでしょう。

代表作中の代表作であるといえます。番組中でも一瞬触れられていましたが、注目点はそのしなやかさでしょうね。

日本の美術に関連するトピックとしてはリプニツカヤが日本で人気になっていて、その絵も人気になっていますが、姿勢が無理で構図がおかしいという批判も。

日本美術と構図の問題としては、河鍋暁斎の「河鍋暁斎」((岩波文庫) ジョサイア コンドル (著), 山口 静一 (翻訳))のカラー口絵にも載っている「十七世紀大和美人図」に込められている意味を知っている必要があるでしょう。「美の巨人」でやっていましたけど、この日本美術のあらゆる技術が盛り込まれた絵は肘の角度とかが実際ではあり得ない形になっています。このように実際の肘の形であるとかより美しい構図を優先してきたのが日本画の伝統なのだ、ということを伝えるためにわざと強調して描いて、弟子であるジョサイア・コンドルに託したものなのだそうです。

マンガやこういったイラストは、浮世絵の直系の子孫です。

この作品の是非は別としても、むしろ遠近法や実際を無視して構図を優先して発展してきた、という部分に歴史的な知識と敬意を持ってから批判するべきであるといえます。

これだけに限らず、日本の絵画の発展史を無視した安易な批判が多く観られます。それが日本の漫画文化ののびやかな発展を阻害する方向に作用していることが非常に問題だと思うのです。

遠近法をうまく使いこなすことや、形を正確に描き写すことは日本美術の発展にも大いに貢献することでしょう。しかし、日本の美術の発展史を踏まえずにそれのみを定規とすることは、多くの場合に非常にマイナスであるといえます。

むしろ形や構図の美しさを粋に楽しみたいところ。

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