戦後70年ドラマスペシャル 妻と飛んだ特攻兵(歴史・その他)

以下は結構厳しめのことを書いています。

日本本土に比べてたくさんの物資がある満州についた主人公の房子さん。
敗戦直前の満洲はまだ戦前の雰囲気があるんだなと感じました。

連絡船で満洲へ行きますが、同時期の戦争特集では、当時、日本近海の輸送船が沈められたものもやっていたので、かなりハラハラものでよく行けたなといった感じ。

まだソ連は進行してきておらず、隊長は「ソ連はドイツとの戦いに疲れ切っている」って本当にそう考えていたんですかね?!ポツダム宣言で攻撃すると書いてあるのにね。

ソ連軍が侵攻してきて、本部からの命令として「随時満州から撤退する」と隊長が読み上げましたけど、これでは誤解も招くでしょう。

実際は関東軍はソ連が侵攻することを察知して、市民をソ連軍が殺している間に時間稼ぎをして逃げるために、ソ連軍が侵攻してきたことを市民に知らせず、悟られないように先に逃げたんですよね。

市民を見捨てたことは描かれていますが、実際は見捨てるとどころではなく盾にしたのです。

やっぱり日本軍の悪行については「控えめ」な描写になる傾向がありますよね。

こういった部分に加えて、主人公周辺も疑問の多い作りでした。どうしても「大義」的なものを見出さないとドラマになりませんからね。

特攻すれば相手が恐れおののく、というのは当時の軍部の主張でそれは全くのでたらめでした。話の中の特攻前日の会議で、そのように主張をさせておいて、間違えを指摘しない作りは疑問です。
子供を中心に、特攻には相手を恐れさせる効果があったんだ!と思う人がい多かったと思います。

特攻の理由として、市民を守るどうこうというお話を作っちゃっていますけど、実効性はたれがどう考えてもなく、戦争の余熱があり、ソ連に飛行機を渡すのが嫌だったといった、あくまで軍隊内の閉じた価値観で動いていたのだと確信します。

それは国内でも敗戦後に特攻した各地の部隊や、戦争を続けようとしていた軍隊の態度から類推できます。

節夫の遺書の「国破れて山河なし」も明らかに国家主義の価値観を示しています。ここには住民のためにという視点はありません。

そういった行動がソ連の侵攻と合わさって「神話」が生まれたのではないか。

奥さんが乗っているのは、今の価値観からするとなんでと思う人も多いでしょうけど、飛行機に乗るのは軍律違反ですが、共に死ぬという部分について言えば当時の価値観から言って当然であって、むしろ平凡すぎるくらいに平凡である、というのがこの物語の本質です。

この作品を観て、国民を守ろうとした関東軍が少しでもいたんだと思うならそれは不幸なことです。

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