BS世界のドキュメンタリー ベートーベン・ファイル 原題:The Beethoven Files制作:Gebrueder Beetz Filmproduktion (ドイツ 2013年)

海外ドキュメンタリー

ドイツ製作の番組にもかかわらず、ラルク・フォークトが「私は交響曲第9番はアメリカでも日本でも聴いています」と証言していたのが印象的、やっぱり日本での第九の演奏機会は飛び抜けているのでしょう。

第九は日本人にとって特別な意味を持つ音楽なのだと思います。

当時の時代を絵で再現していますけど、なんとなく風味が日本の番組の「プロファイラー」に似ています。「プロファイラー」が参考にしたんでしょうね?

ピアニストとしては「即興で展開」させる能力がまるで違ったとのこと。

展開という言葉が付いているということは奔放ではなく、作曲でみられるような主題を論理的に展開しているような系統の即興だったのでしょう。

ベートーヴェンの音楽にはフランス革命時の先行きが見えない社会の不穏な雰囲気が反映されているとのこと。

耳が聞こえないので宮廷楽長などが出来ず独立した音楽家にならざるを得なかった、というのもなるほどと思いました。

こういうアクシデントで歴史は動いていくものです。

マネジメント能力にたけていたためにこれだけ売れることができた、とのこと。こういった現実的な能力はモーツァルトの真逆ですよね。

難聴に苦しむ話が続きますが、フォークト曰く、ベートーヴェンの音楽は「常に喜びに満ち溢れているんです」ということで、木漏れ日の映像が印象的。

フィデリオの練習中に、指揮棒を振り回して延々と続けるので、楽団員に耳が聞こえていないのではないかと思われたとのこと。

やっぱり聞こえないということは周りに自然と悟られるものです。

ベートーヴェンには「優しくユーモアがある部分と短気で狡い面」があったとのこと。人を利用することもあったというのですが、どんな感じだったんでしょうね。

他でもベートーヴェンは高貴な部分と下卑た部分を併せ持っていたという証言は多いです。この2面性はベートーヴェン理解の肝だと思います。

晩年は被害妄想に悩まされ、些細なことで怒るようになり、ウィーン体制の復古的な社会の中で過激な発言をするので友達は離れて行ったとのこと。ここら辺は鉛中毒の影響が強いのでしょうか。

その中で傑作を生みだしていくというのはどういうバランスなのか・・・苦しみはあったがあくまで彼は負けず、魂が研ぎ澄まされていったということなのでしょうか。

「彼が苦しみぬいたからこそのこの傑作が生まれたからです。そうでなければ人類はこの遺産を手にすることはできませんでした。」とシモーネ・ヤング。

そういった一つ一つが人類史の現象なんだなぁ、というスケール・時代性を感じさせる音楽家です。

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