音楽総監督のダニエル・バレンボイムは自分から進んで聴くことのない指揮者。
序曲は聴き慣れているので、他の指揮者と比較がしやすいです。
バレンボイムの指揮は力強くて重量感のあるもの。しかし力みがちで余裕が無く、空回りして馬力の割には心の琴線に触れてこない感じ。
やっぱりかなり、フルトヴェングラーの影響が強そうだな、という感じ。この深刻で広がりを欠く音色は、同系統でしょう。両腕を突き出す指揮姿にも髣髴とさせるところがある。彼から深刻なスタイルを学んだのだと思います。
特に戦後の最後期からの影響の強さを感じる。インタヴューでは、音が出る前に静寂を意識することを語っていますが、それも影響でしょう。
意外と強弱の幅が無く、音楽の持つ躍動感も生かし切れていないでしょう。そういったものをベートーヴェンが楽譜にしっかり書きこんでいるのにもったいない感じ。せっかくなのだから、こういった所ももっとフルトヴェングラー風にすればよいのに、と思います。
「力みのない」音色という言葉を多用するところが宇野功芳氏の評論の一等優れたところだと私は考えているのですが、そういう美意識からはこぼれ出る演奏だろうなぁ、と思います。
厳かなばかりで音楽が前に進まない印象。逆にこういう、国の威信すらかかっていそうな、大きなイベントだとそういう所が好まれたりする部分もあるのでしょうね。
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