滅茶苦茶しつこい神への讃歌から入る「クレド(Credo)」。
弱音部は静謐であり、人の弱さを感じさせ、それに比べての神の恩寵の深さを感じさせます。
キリストが死んでしまう部分は消え入りそうな悲劇的な音楽。
その後に再びテンションが上がり壮麗な合唱の重なりを形成。
「私は神を信じます」「聖書に書いてある通り」「三日後に復活した」といったセリフに満ちており、ひたすら「アーメン」と歌いまくっていて、キリスト教徒でないものを寄せ付けない雰囲気。
やっぱり第九と並ぶ傑作と常に言われながら日本での演奏機会が圧倒的に少ないのはそのせいですよね。(第九も実は根底の精神は同じなのですが)
Wikipediaによると、ベートーヴェン自身は宗教性を大切にしつつも、カトリックに捕らわれない宗教観の持ち主だった模様。ここら辺のバランスはモーツァルトに(珍しく)似ています。宗教的な精神性を大切にしつつも凝り固まった信仰をもたない信条は、洋の東西を問わず多くの偉人に共通しています。
キリスト教自身をアップデートさせる運動の中にいたと解釈できるでしょうか。
第九の合唱部分だけがひたすら続いていくようで音楽的にはお得ではあります。美しくも激しく、まさに傑作で極めて感動的です。
最後の4連打に乗せた駄目押しのアーメンも強烈。フルートのか細い音色は直接天上と繋がっているかのようです。
アーノンクールの指揮も、もっと出来そうな部分は感じるのですが、常識的な範囲内か。
各曲間の、カッと目を見開いて余韻を残す終曲は独特。80余歳でこの力強さは流石のバイタリティといえるでしょう。
これだけ訓練された人間がこれだけ集っている人的厚味は圧倒的です。
コメント