サントリー美術館 誇り高きデザイン 鍋島 第一期

#その他芸術、アート

サントリー美術館は展示替えが激しくて、同じ展覧会を2,3回行かないと、全体が良く分からないということがあるんですが、今回は一回行けば大体網羅できる感じだったので、早速行って参りました。

一つ目は「染付松樹文三足大皿(重要文化財)」で、イガの様に描かれた松が、枝と相俟って抽象的なデザイン。「色絵唐花文皿」はバタ臭い雰囲気がする位の、コントラストのある色使い。
「瑠璃釉豆文葉形皿」は瑠璃釉の色のぼかし具合に、全てを語らせた作品。「瑠璃釉色絵唐花文皿」も日本特有と思われるグラデーションの美しさが見事な小皿。
前衛的な造りが印象的な作品群で、この展覧会はまず、最初の方のヴァリエーションで圧倒してしまおう、という構成だと思いました(笑)
「青磁染付竹文三足大皿」は綺麗に開いた感じの、端正な青磁で、鍋島は青磁も作っていたんですねぇ。やっぱりプロの方ですと、これは鍋島ですね、とか一目なのでしょうか(^_^;)

「色絵更紗文皿」は更紗の繰り返す精密な模様が、エキゾチック。なんでも鍋島焼きはこのように、精密な模様の反復と、寸分違えずに何作品も作り、セットをそろえることが得意だったそうですが、だんだん模様のネタが尽きてきたらしく、近くの民間の有田焼から意匠を取り入れてくるように、指令を受けたそうです(笑)
藩の窯は民間に比べると発想を生み出す力にかけているなぁ、というより、ここでは民間の活力を素直に公的機関に取り入れる精神が印象に残りました。こういう視点から見ると、今の日本政府は民間の良い所を取り入れる力に欠けt・・(以下延々と略
どんな時代のどんな場所でも、お役所は硬直しやすいですから、それを承知した上で、民間の良いものをどれだけ取り入れて新陳代謝して行けるかが勝負ですよねぇ。
「誇り高きデザイン」のタイトルの通り、「最高のものを作ろうとする厳粛な気持ち」が鍋島には込められているようです。

「色絵毘沙門亀甲文皿」は出光美術館の本をデザインしたお皿。
「色絵糸巻文皿」は糸のひょろひょろした感じが、よい雰囲気の作品。
「染付芙蓉文皿」は鶴が羽を広げたような、放射状の線が美しいです。
「染付銀杏唐花文皿」はHoLiCの侑子さんの魔法陣に結構似ている図柄で、やっぱり伝統が息づいていますかね?
「染付雲雷文大皿」は中心に向かってぼやけて行く様が、なかなか趣き深いです。

鍋島とか伊万里ですとか、朝鮮から陶工を拉致してきたり、青花の影響ですとか、景徳鎮との関係で作品が変化するなど、大陸との関係が印象的です。

毎度、司馬遼太郎さんは、日本はアジアではない、と言っていた人で、東アジアとの精神的な繋がりを浅くみる人だったんですよね。
また、同氏の賞を受賞した杉山正明氏は「東アジアという用語がはらむ、危うさ、うさんくささ」(モンゴル帝国と長いその後 (興亡の世界史)50ページ)を指摘されていて、このような括りに疑問を持たれているように読めるのですが、白川静さんの詩経と万葉集の研究等は、東アジアというものがその基盤を一にするものであり、その括りが歴史的に妥当であることを明らかにしたものだと言えるでしょう。
白川静さんは東洋を確立した人だ、といえるかもしれません。

また氏は大元ウルスにおいて初めて抽象概念が国号になったとするのですが、商は神政的な刑罰権を示す、抽象概念を国号にした国だといえるでしょう。
大航海時代の前に遡ってモンゴル時代の意義を知らしめる氏が、それ以前の古代史に無頓着なのは、ほほえましいというほかありません。(失礼、言ってみたかっただけです(^_^;))

現代の十四代今泉今衛門さんの作品も沢山置いてあって「色絵雪花墨色墨はじき雪文花瓶「凍雨」」がプラチナっぽい光り物で雪の結晶を描いて散らした作品。
かなり綺麗で、これは、良いですねぇ。
前衛的なものは自然物や伝統と組み合わせると説得力が増す、ということを前にも思って書いたんですが、そういう風に、自然物に頼らないと大方に対して説得力が出て来ないかもしれないほどに前衛的だったと思います(笑)
先代が「薄墨」という黒をぼかしていく手法を開発したそうなんですが、「色絵薄墨墨はじき時計草文鉢」ですとか、鉢の中心から、その手法で良い感じにぼかされていました。
白が印象的で、雰囲気としては、デザイナーの吉岡徳仁さんという方の感じに似ていますかね。

有田では「染付兎文皿」兎をそのまま皿にした絵で、国芳的な意匠といいますが、キメだし的な立体感も良かったです。

最後に置いてあった「色絵壽字宝尽文皿」が非の打ち所のないほど、おめでたい意匠で、鍋島は幸せを運ぶ贈り物だった、という事を端的に表していたと思います。ありがとうございました。

最近は季節の変わり目で、風邪を引きやすい時ですが、喉などを痛めたりした方は、おだいじにして下さい。

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