国立科学博物館 特別展 マチュピチュ「発見」100年インカ帝国展 その5

#その他芸術、アート

券を頂いたので、行って参りました。

最初のほうのキャプションでインカの遺産は大体スペインによって金の延べ棒にされており、ほとんど残っていないこと解説されていました。

「侵略者は常に物を奪うだけではなく心も破壊します」とあって、日本についても考えさせられる部分ではないでしょうか。

構成に参加されている網野徹哉さんは、今を知る為に歴史をやっている、と展覧会の最後の構成に関わった人の紹介で語っていて、そういう視点が持ち込まれているとみて良いでしょう。

儀礼用の水入れですとか、ジャガーに支えられる形で、商の青銅器の虎を模した饕餮文と同じ様なものを感じます。とうもろこしのお酒であるチチャを重視する文化など、白川静さんが仰る東洋の沿海系の文化と似ている部分は数知れず「自然への敬意の心が日本の神道」と共通するという、一番最後に置かれていた展覧会に寄せられたペルーの大統領の言葉が大きく本質を突いています。

そういうことを語られたこと無いと思うんですけど、網野善彦さんの御子息の徹哉さんが南米を研究されているのも偶然ではないのではないでしょうか。南米では女性に神秘的な力を認めていたらしく、網野節が炸裂します。

世界的な研究の流れなのかもしれませんが、氏の本は一世代前の増田義郎さんの本と較べても、先住民からの視線が強いように思います。

神道と関連する部分といえば、「ラテンアメリカ文明の興亡」(高橋 均 (著), 網野 徹哉 (著))という本には植民地化されてからいくらか経った時代の記述として「インカが「ワカ」化されてゆく。」(文庫版236ページ)とあり、王権であったインカが地元の習俗の象徴となっていく過程が描かれていますが、逆に言うとインカの王権は神聖王朝でありながらも実際は地元の習俗と分離していたのであり、同じことが日本の天皇と地域の神道の間にも言えるのかもしれません。

いけにえの文化は、何か良いことがあるためには犧牲を払わなければならない、という互恵の文化で説明されていて、周囲からはなるほどという声がしきりに上がっていました。古代中国のいけにえとかももしかしたらこれで説明できるんですかね?

CLAMP先生のツバサとかHoLiCの侑子さんに色々質入していく感覚が近いのかもしれません。

互恵を利用して、贈り物をたくさん贈りつけて返すのを禁じて、インカ帝国は回りを服従させていったのだそうで、中国の冊封システムがやはり連想されます。
軍事力が低ければ制圧して搾り取って良いという万国公法的な発想(大体)よりは文化的だと思うのですが、どんなものでしょうか。

時代的な物もありますしヨーロッパを一まとまりにみるのは良くないですが、実際「インカ帝国―太陽と黄金の民族」((「知の再発見」双書)カルメン ベルナン (著), 阪田 由美子 (翻訳)) の165ページの図をみれば差は歴然です。インカよりスペインの方が民衆から一方的に搾り取っています。

石積みの精巧な技術が凄く、綺麗に削ってきちんとあわせており、かみそり一枚も入らないと称されるのだそうです。日本は適当に積んでいるのが多いのかな、と思っていたんですけど、江戸城とか結構整形して綺麗に積んでいるようですので、手間がかけられれば同じ様に作るということでしょうか。

チャスキという駅伝制度があって、一日の走行距離は驚異の280kmだったそうです。

インカのイメージを代表する黄金文明はそもそもインカのものではなく、沿海部の違う勢力の技術をそのままひっぱって来たものらしく、商の青銅器文化を丸々引き継いだ周を思い出します。

一通り文化を紹介した所でスペイン以降の部に入り、解説が。
「内乱で混乱するインカ帝国と富と領土への強烈な欲望に貫かれたヨーロッパの巨大帝国とが、いま衝突する」と少年漫画雑誌の煽り文のような血湧き肉踊る文章ではじめられており、周囲には思わず「凄い悪いやつらだね~」と漏らす人がいらっしゃいました。

会場はスペインの悪い評判で持ちきりで、私も文句無くこの当時のスペインはカルト国家であると断言できます(^_^;)

インカの聖なる谷の解説が丁寧で、これは「インカとスペイン 帝国の交錯」((興亡の世界史)網野 徹哉 (著))で要衝として解説されていて、 感慨深いです。

綿花やリャマやアルパカの毛を触れる展示があって、これは国立科学博物館の美徳だと思います。他のあらゆる展覧会でも、一箇所くらい触覚で知る事が出来るコーナーがあった方が良いと思います。

日本で綿花が使われるようになったのは意外と古くなく、インカの豊かさが感じられます。

インカの正式名称は「タワンティンスーユ」といい、4つの国という意味で統合への願いが込められているとの解説が。

色素の解説も豊富で、コチニールは口紅に使われていて、キスをしても24時間色落ちが無いとの解説。理系の展示はさわやかですよね。

探検の歴史ということで1925年のマチュピチュの写真がありましたが、植物で覆われています。

植物といえば、4月7日のANNのお花見のニュースは放送事故ですかね。
全体的に、とても春めいていたと思います!最後のジェスチャーをするコーナーに入る時に、一瞬伸び上がるのがかわいらしいと思います。

4月22日の最後のフィギアのポーズを極めたのは素晴らしかったと思います!かわいらしさに興奮して、ぴょんぴょん跳んで部屋を回ってしまいました(^_^;)衣装も渋くて柔らか味がありました。

来た人達の感想が貼り付けてあるコーナーでは、17歳の女の子が描いたアンデスっ子萌え絵が一等目立つ所に張ってあって、これが非常に上手く、日本の漫画文化の厚みを感じました。文章の内容もとても詰まっていました!

最後はマチュピチュの3Dシアターが。思った以上に面白く、冒頭を見逃したので次の回の最初のほうを観ていたら、また全て観てしまいました。
上空から観たパノラマ感が非常に良く出ていて、少し視点が移動するだけで、相当身体に訴えかけるものがあります。

非常に情報量が多く、多角的な展覧会でした。日本との共通点や現代に連なるもの、違う惑星であるかのような豊かさが良く感じられた展覧会でした。ありがとうございました。

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